風が強いので大切な麦わら帽子が飛ばされては困るとルフィは男部屋に帽子を置きに行った。
「きゃーーー!!」
帽子を自分のハンモックに乗せた途端に叫び声が聞こえた。
「この声ってゾロ?」
何故叫んだのか不思議に思いながらルフィは甲板に上がった。
そこには一人立ち尽くしているゾロと甲板に転がっているサンジ、ナミ、チョッパーがいた。
「な、何よコレ…なんで自分が目の前にいるのよ…剣…ってことはこの身体はゾロ?」
「どうしたんだ、ゾロ? おかまごっこか?」
「バカ! 違うわよ! 私はナミよ!」
「はァ?」
ナミだと言ったその姿はどう見てもゾロだった。
「いたた…何があったんだ?」
「あっチョッパー、大丈夫か?」
「はァ? 何、言ってんだルフィ。おれはサンジだ…ろ…………なんじゃこりゃーーー!!」
チョッパーは自分をサンジだと言い、己の手を見て叫んだ。
「う…いてェ…みんな大丈夫…えー!! おれェ!?」
頭をさすりながら起き上がったサンジはチョッパーを見て叫んだ。
「ということは私の中はゾロってこと? …はァ」
額を押さえ、今だ寝ているナミを見てゾロはため息を吐いた。
「えっ! まさかマリモではなくナミさん?」
「そうよ…」
「ゾロは気絶してるんじゃなくて寝てるみたいだ」
サンジは素早くナミの呼吸を確かめ、ゾロとチョッパーに告げた。
「……みんな、何、言ってんだ?サンジ、そこに寝てるのはナミだぞ? そもそもチョッパーが普通そういうことするだろ」
一人状況が理解できずルフィは困惑した。
三人は目を合わせ頷き合いゾロが口を開いた。
「いい? ルフィ、私たちは入れ替わってるのよ。ゾロの姿をしていても私はナミなの」
「えっ………えェー! ホントか!?」
ルフィは驚き、三人を代わる代わる見つめる。
「ちなみにおれはチョッパーじゃなくサンジだ」
「おれがチョッパーなんだ」
「こんな状況でも寝てるのがゾロよ」
ナミの姿をしたゾロを本物のナミが指差す。
「なんで入れ替わったんだ?」
至極当たり前の質問をルフィがした。
「お、おれのせいだーみんな、ごめん」
サンジ姿のチョッパーがションボリうなだれる。
話を聞くと調合していた薬を運んでいる途中、転んでしまい運悪く薬が強風に吹かれ、偶然その場に居合わせた四人に降り掛かったらしい。
「きっと変に混ざっちゃったんだ…まだ調合の途中だったから」
「ロビンちゃんとウソップ、買い出しに行っててよかったな…これ以上入れ替わり人数増えたらわけわからん」
「…すぐに元に戻るんでしょうね?」
「おかまみたいだな、ナミ。いでっ」
ルフィはゾロ…ではなくナミに無言で殴られる。
「余計なこと言うなよ、ルフィ。考えないようにしてんだからよ」
サンジが呆れ顔でルフィを見上げる。
「うー…明日になれば治ると思う」
「明日じゃ困るのよ…トイレに行きたくなる前にさっさと迅速に早急に解毒剤を完成させて」
「わ、わかった。なんとか調合してみる」
ナミの言葉を聞いてサンジは愕然とした。
「そ、そうか! クソ! なんでおれはナミさんの身体に入れ替わらなかったんだ!」
「…サンジ君と入れ替わらなくてホントよかったわ」
悔しがるサンジを白い目で見ながらナミは心底安心した。
「なぜマリモがナミさんなんだ! 蹴れない…その姿だと蹴れないィ」
眠るゾロの周りでサンジが騒ぐ。
「うるせェな…チョッパー…は? おれ?」
タイミング悪く目覚めたゾロに事の成り行きをナミは渋々説明した。
「起きるなら最初から起きてなさいよね…説明代金あとで貰うから」
「ぐわー! おれの声で女口調は止めろ!」
「じゃあ、あんたは女口調で喋りなさいよ? 男らしい自分なんて見たくないわよ」
腕を組み、唸りながらしばらく思案した後、ゾロは口を開いた。
「……薬ができるまで別行動にしねェか? 一人なら自分の姿を気にすることねェからな」
「なかなかいいこと言うじゃない? 賛成よ。薬が出来たら呼んでちょうだいね、チョッパー」
「おれもこの姿で料理できるか試してみるかな…もしかしたら今日中に戻れないかもしれねェしな。あとは頼んだぞ、チョッパー」
「わかった。できるだけ急ぐぞ」
その場を立ち去ろうとしたナミは忘れていたと呟いてゾロを見た。
「ゾロ、私の身体触ったら全裸で街を歩き回るわよ?」
「誰が触るか!」
「それならいいのよ」
全員がバラバラとその場を解散した。
一人取り残されたルフィはしばし考える。
(おもしれェから誰かのトコに行こうっと。誰のトコに行こうかな?)
・チョッパー姿のサンジ
・サンジ姿のチョッパー
・ゾロ姿のナミ
・ナミ姿のゾロ