ルフィはチョッパー姿のサンジに会いにキッチンに行くことにした。

「サンジ、チョッパー姿で料理できるのか?」

キッチンの中に入るとサンジが立ち尽くしていた。

「愚問だな…と言いてェとこだが身長が足りねェ…ルフィ、そこにあるイス取ってくれ」
「はーい」
「サンキュ」

サンジはイスに登り、包丁を握る。

「チョッパーは気合いで物を掴んでんだな…なんとかなるもんだ」

近くにあったリンゴをしゅるしゅると華麗にむいた。

「おー! すげェ! 料理するチョッパーだ!」

ルフィはサンジにパチパチと拍手を送った。

「中はおれだからな」
「わかってるって〜見た目の話だ。口が悪いチョッパーも滅多に見られねェじゃん」

楽しそうに笑うルフィを見てサンジはため息を吐く。

「ほら、りんごやるよ。はァ…お前、おれが一生チョッパーの姿だったらどうするんだよ?」
「どうって…元に戻るんだろ?」

りんごを受け取りながらルフィは怪訝な顔をする。

「もしもの話だ」
「うーん…今までとあんま変わんねェと思うけど」
「……違うだろ、全然」

あっという間にりんごを食べ終わったルフィにアホなことを聞いたと思いつつサンジはイスから下りた。

「いや、だってサンジはサンジだろ? チョッパーの姿をしてても、おれがサンジだと思ってたらそれでいいんじゃねェか?」
「……へェ? 姿形は関係ないってことか?」

分かっていないようで言ってほしいことを言う船長を見て、サンジは笑う。

「おう! その笑い方なんてサンジそのものだぞ」

チョッパーにいつもするようにルフィはサンジを抱き上げる。

「えと…つまり、サンジならどんなサンジでもおれは好きだぞ?」

赤い顔でルフィはぎゅっとサンジを抱きしめた。

「ルフィ…おれもお前が好きだ。でもマリモと入れ替わらなくてよかった…」
「見た目が誰でもおれはサンジが好きだから関係ねェよ」

ルフィが不思議そうにサンジを見るとしかめっ面をしていた。

「分かってる…分かってるけどおれがお前を抱きしめてもクソ剣士がルフィを抱きしめてるように見えるだろ? 絵的にムカつくじゃねェか」

苛立ちを隠そうともせず、サンジは応える。
ルフィはサンジが腹立てる理由がよくわからず、きょとんとした。

「なんだそれ」
「だからもしもマリモと入れ替わってたらお前に近づかねェだろうな」
「なんだそれー! おれはそんなの嫌だぞ! サンジの近くにいたい」

サンジを目の高さまで持ち上げ、ルフィは口を尖らせ拗ねたようにサンジを見つめた。
サンジはなんとも言えない顔をしている。

「お前、この姿じゃなんもできねェの分かっててそういう発言してんのか?」
「?」
「あー…やっぱりわかってねェよな。早く自分の身体に戻りてェな」

悔しそうにひずめの手でルフィの頬に触れる。

「…そうだな。なんかおれ今サンジに、ぎゅってして欲しいぞ」
「元に戻ったらいくらでもしてやるよ。それ以上のこともな」

耳元で囁く。そんなサンジの顔を耳元から押しやる。

「…代わりにおれがぎゅってしてやる」

ルフィはサンジを手加減なしでギューっと思いっきり抱きしめる。

「いでででで! 抱き潰す気か!」
「チョッパーの声でそんなこと言うからだ!」
「仕方ねェだろうが! 今はチョッパーなんだからよ!こいつだって大人になったらこんなセリフ言うに決まってる!」

ルフィの腕の中でサンジはジタバタと暴れながら、めちゃくちゃなことを言った。

「なんか…そんなチョッパーは嫌だなァ」

腕の力をゆるめてルフィは再びサンジを顔の高さまで持ち上げた。
困った顔で見てくるルフィの頬にサンジはチュッとキスをした。

「チッ、仕方ねェな…今はこれで我慢してやるよ」
「な、何が仕方ないんだよ〜」

突然の行為に驚いてルフィは、どもってしまう。

「口にキスしたらチョッパーが得するだろうが…あ〜早く元に戻りてェ」

サンジはルフィの首に抱きつき、すりすりと頬を寄せる。
なんだかくすぐったくてルフィは笑った。

「まァ、しばらくはチョッパー姿を楽しむとするか。お前に抱き込まれるなんて普段じゃできねェ体験だしな」
「ししし、そうだな。それにチョッパーはきっとすぐに解毒剤を作ってくれるぞ」

ルフィはサンジを抱えたままイスに腰掛ける。
そしてそのまま、今度は優しくぎゅっとサンジを抱きしめた。



***



「いや〜やっぱり元の身体が一番だな」
「よかったな、サンジ」

あの後しばらくしてサンジ姿のチョッパーが解毒剤を持ってきた。
それを飲むと四人はキレイさっぱり元の身体に戻ることができたのだ。

「まァな。じゃあ宣言通り、ぎゅっとしてやる」
「えへへ、でもそれ以上のことはしなくていいぞ?」

ぎゅっと抱きしめられ満足そうにルフィはサンジの胸に擦り寄る。
しかし注意も忘れない。

「遠慮すんなよ、ルフィ?」
「してねェって! こらッ、どこ触ってんだ!」
「さァ? どこだろうな」
「ん…ッ…もう触るなってば!」
「嫌だね」

ニヤニヤ笑うサンジをルフィは大した抵抗もできず真っ赤な顔で睨みつけるのだった。


















*END*