綱吉は夕日に照らされる道を一人歩く。向かう先は黒曜ランド。
骸に言われたからというわけではないが、三人の様子が少し気になっていた。

(ご飯、ちゃんと食べてるのかな〜クローム達)

黒曜ランドは廃墟だ。調理器具もなさそうだし、そもそも料理を作る人はいるのだろうか。
そんなことを考え出すと、現状が気になって仕方なくなってしまったのだ。
一番話しやすいであろうクロームに聞いて、状況が悪いようなら差し入れでもしようかと考えながら歩いていると見覚えのある姿に身体が強張った。

「あ! ボンゴレ!」

よりによって城島犬。しかも、柿本千種が見当たらない。
どう考えても自分のことを嫌っているであろう人物との一対一の対面に多少身構える。
そして、骸の噛み付く発言を思い出し、頭がくらくらしてきた。
無視してくれればこちらも絡まずに済むが、堂々と指し示されると話しかけずにはいられない。

「こんなとこで何やってんらよ」
「こんにちは、城島。えーっと、その〜、クローム知らない?」
「はぁ!? あの女がどこにいるかなんて知らねーっつの!」
「だよね〜」

変に絡まれたらどうしたものか困ったが会話はしてくれるらしい。
しかし、ぎこちない空気が辺りを占めていた。
ここは一度退散して、後日改めて来た方が良さそうだ。

「……しばらくは帰って来ねーびょん」
「え?」
「たぶん、今は銭湯に行ってるからいねーんらよ」

そっぽを向いているが、やたら素直で逆に怖い。

「そ、そっか、ありがとう」
「べ、別にてめーのために言ったわけじゃねー! 独り言だ!」

無茶な言い訳に綱吉もリアクションに困った。
どこか生意気なランボに通じるものがある気がしたがそんなことを口に出した瞬間、地に沈められるだろう。

「あ、そういえばケガは大丈夫なのか?」

黒曜ランドには満足に治療できる設備がないように思えて、ついつい心配してしまった。
すると、犬は頭を掻きむしりながら叫ぶ。

「うぎー!! お前、ほんとに何でできてんの!? ウゼー!!」
「ええ? な、仲間なんだから心配だよ」
「っ…オレらがマフィアの仲間なわけねーっつの!」

相当嫌われてるなぁと思いつつ身の回りの子供をイメージしてしまったので前ほど怖くない。

「えーっと、骸が夢に出て来てさ…遠回しに城島達のこと
心配してて…ケガとかしてないならいいんだけど」
「……骸さんに言われたから来たのかよ」

拗ねたような口調に目を見張る。
本人は気づいていないようだが不機嫌そうな態度に綱吉は苦笑しつつ、頬を軽く掻いた。

(やっぱりオレと骸が夢でとはいえ会話してんのは嫌だよなぁ)

骸があんな場所にいるのは自分のせいでもある。
いや、復讐者に連れて行かれたのは自業自得であり、リボーンにも同情するなと言われていた。
でも、気になるのだから仕方ない。
犬も千種も仲間である骸を想っての行動だったのだから自身へ反発もあるだろう。
やはり、嫌うだけの理由があると認識し、綱吉はせめて正直に話すことにした。

「骸は城島達のこと気にしなくていいって言ってた。きっと、信頼してるからだと思う。食事とかケガとかはオレが勝手に気にしてるだけだから…今日、クロームに会おうと思ってたのもそのこと聞こうと思ってたんだ。えっと、気に障ったんなら、ごめん」
「ふ、ふーん? ボンゴレが勝手に…。別にそんなことで怒ったりしねーびょん。誰もケガしてねーし、元気らし」
「それならよかった。クロームに聞かなくても大丈夫なんだな」

綱吉の安堵からでた笑顔に犬は驚き、目を見開いてから顔を逸らした。
その様子には気がつかず、綱吉はポケットを探る。
目当てのものを見つけて、犬に差し出した。

「はい、これ」
「な、なんらよ?」
「ガム」

フゥ太が出かけているとき、ランボとイーピンにあげようかと思っていたが数が奇数だった。
ケンカになっても困るので、二人には代わりにアメをあげた。
そのときのブドウ味の板ガムが余ったままポケットにあったのを思い出したのだ。

「クロームと柿本にも渡しておいてよ」
「〜っ! ……わかったびょん」

謎の葛藤をしてから犬は綱吉の手からガムを勢いよく取った。
予想外に大切そうに自身の制服のポケットにしまう姿を見て、綱吉は安心する。

「…これ、やる」
「ガム?」

ガムをあげるとガムを貰ってしまった。もちろん違う種類のだが。
犬の差し出したガムは当たりつきで小さな箱に6粒入っているイチゴ味のガムだ。
確か、この近くにある駄菓子屋で見たことがある。
ぽかんとしていると無理矢理ポケットにガムを突っ込まれた。

「これで貸し借りなしなんらからな!」

綱吉からガムを受け取らないという選択肢はなかったらしい。
そう思うと、犬は不器用なだけなのかなと綱吉は内心で思った。

「あはは、こんなことで恩着せがましくしないって」
「…うるへー。オレ、帰るからな! じゃあな!」
「うん、またね」

多少怖いが前ほどではない。その影響か再会を楽しみにするような言葉で別れを告げた。
またね、と言ったとき犬の頬が赤く染まっていたように見えたが照れる要素は綱吉には見当たらないので夕日がそう見させたのかもしれない。
走るように帰っていった犬の後ろ姿を見送ってから、綱吉は犬から貰ったガムを取り出した。
よく見ると包装ビニールが開けられている。
どうやら食べ掛けをくれたらしい。振るとカラカラと音がした。
とりあえず箱を開けて中身を出すと、2粒のガムと紙切れが出てくる。
2粒のガムを口に含むと甘い味が広がった。そして、紙切れを確認する。

「あ! 当たりだ! 城島、見てなかったのかな?」

勝手なイメージだが犬は性格的に他人に当たりくじを渡すようには見えない。
次に会うときまでに駄菓子屋で交換しておこうと思いつつ、綱吉は家路についた。




***



「これ」

黒曜ランドに戻った犬がガムを二人に差し出すと怪訝な表情をされた。
千種の記憶が正しければ、犬は当たりくじを交換するために駄菓子屋へ一人で行ったはずだ。
当たりと書かれた紙を無くさないように数個ガムの残った小箱に入れたままで。
そのガムは板ガムではなかったし、自分達に渡す理由が見当たらない。
考察の終わった千種は怪訝な表情のまま、犬に話しかけた。
怪訝な表情、とはいえ千種の表情にあまり変化はない。
無表情に見えるが、多少の変化はあるという程度だ。

「犬、何かしたの?」
「な、なんれらよ!?」
「ガム好きだろ? それをくれるなんてやましいことでもあるのかと思って」
「オレからじゃねーびょん! ……ボンゴレから」
「ボスが」

クロームは嬉しそうに笑って、犬からガムを受け取る。
千種が受け取らないのを見て、犬は自分が貰った分のガムを取り出し見比べた。
市販のガムなので別に大きさは変わらない。
確認が終わり、自分の分をポケットにしまった。

「…柿ピーいらねーならオレがもらう」
「いや、もらっとく。犬、食べないの?」
「べ、別に今は腹減ってねーし!」

タイミングよく犬の腹がぎゅるぎゅると鳴る。
慌てる犬に千種は言葉を付けたし、もう一度聞いた。

「ボンゴレからもらったガム、食べないの?」
「こんなんで腹膨れねーっつの!!」
「……ふうん」

犬はいつもならお腹が空けば、駄菓子をばりばり食べている。ガムだって例外ではない。
食べない理由がすぐに思い当たり、千種は犬をじっと見た。

「なんらよ!! 柿ピーこそ食わねーのかよ!?」
「…めんどい」
「…おまえ、食わねーの?」

犬の質問に綱吉のくれたガムを見つめながらクロームは照れたように笑う。

「だって、なんかもったいないから。ボスがくれたものだし」
「お、オレがボンゴレがくれたガム食わないのはおまえと同じ理由じゃないびょん!!」
「聞いてないよ、犬」
「ぐぬぬぬぬ」

真っ赤になって唸る犬に千種は呆れたような視線を送りつつ、ガムをポケットにしまった。
結局、三人とも綱吉から貰ったガムを食べることはなかったようだ。


























*END*







ガムって賞味期限ないらしいね!
ツナからのプレゼントは例えガムでも勿体なくて食べがたしという話。
もちろん、犬はツナに当たり付きをわざとあげているよ。デレですデレ。
なぜか犬ツナの話はそこそこ思いつくが犬の喋り方がギザムズカシス。
ううーん、合ってんのかもわかんねーや(笑)
ツンデレ比が6:4くらいですかね。
ツナの態度にどうしていいかわかんないけど邪険にもできなくなってきた頃です。
犬って仲間意識ないヤツには結構ツンツンしてると思う。
リボーン小話書くとき原作ベース+αくらいの感覚で書いていることに気がついた。
あー、だから骸も変態全開で書いてないんだ。むむむ、どうしようかな。
だって、犬が露骨にツナにイチャコラするのも面白そうじゃないか。
まぁ思いのままに書きます。いつもそうだしな。



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