昼食を食べ終わると、それぞれが野球に付き合ってくれそうな人物を探すために校内に散らばる。
(クラスで暇そうなヤツはいなかったしな〜)
放課後、しかも今日ということが難しくさせていた。
いつもはこういう馬鹿騒ぎに乗ってくるメンバーも今回は用事があると残念そうにしていた。
ルフィも誰かいないかと悩みながら歩いていると見覚えのある姿を見かける。
「ゾロ先輩」
「ん? ああ、ルフィか」
「野球、好きですか?」
「は? まァ嫌いじゃねェけど」
その返事にルフィは笑顔でゾロを見た。
「じゃあ今日の放課後、一緒に野球しません?」
「あ、ああ…別にかまわねェけど、どこで?」
「学校のグラウンドで! 今日は野球部、月に1回のミーティングだけの日らしいんで空いてるんですよ」
ゾロはなるほどと頷いてから首を傾げる。
「なんで野球なんだよ」
「あ〜、1年にケンカ売られまして…買ったんですけど。メンバーが足りないんで探してる途中なんです」
「そうだったのか。まァ暇だからいいぜ」
あっさりとした了承に驚きつつ、ルフィは両手を上げて喜んだ。
「ホントに!? ありがとうございます! あと、普通の野球じゃないらしいです」
「ん? どういう意味だ?」
「いや〜、おれも詳しく知らないんだけど後輩がそう言ってました。それでもいいですか?」
「あー、そう。こんなアホみたいなこと誘ってくるヤツ他にはいねェからな。別にいいぜ?」
笑うゾロにルフィはむくれた。
「おれは巻き込まれただけだもん」
「はいはい。放課後にグラウンド集合でいいだろ?」
「はい! お願いします!」
ゾロの後ろ姿に手を振り、振り返るとすぐそばにサンジがいて悲鳴を上げそうになる。
「お、お前な〜無言で近くにいるなよ…びっくりするだろ?」
「今の誰?」
「え? 先輩、野球してくれるってさ。うーん、詳しいプロフィールはおれも知らないや」
そういえば、ゾロのことを詳しく知らないことに気づきルフィは首を傾げた。
それを見てサンジは安心したように笑う。
「それならいい」
「ん、そうか。サンジは誰か見つけた?」
「シャンクス先生」
「そっか〜。ん? ええ? い、いいのかな」
「おーい! 二人とも!」
廊下の向こうからウソップが来るのが見えて、ルフィも手招きをした。
「ウソップ、先生を戦力に足すのはありなのかな?」
「ありだ! じゃないと、おれの助っ人も無意味になるからな」
「あ〜、なんかわかった。こういうこと付き合ってくれんのってシャンクス先生とエースだもんな、おれらが知ってるのは」
鼻高々なウソップにルフィは苦笑しつつ、携帯を出す。
「正解! ってことは、おれ達三人と先生二人と?」
「プラス先輩一人。うーん、守備を考えるともうちょい欲しいな…駄目元でメールしてみる」
「誰に?」
メールを打ちながらルフィはサンジの質問に応えた。
「幼なじみなんだけど、別の学校行ったんだ〜女子校行ったからな〜」
「え!? 女の子!?」
「あー…あいつはやめておいた方がいいぞ? そのーいいヤツなんだけどな」
微妙なリアクションにウソップは神妙な顔で頷いた。
「ルフィの知り合いという時点で変なヤツだったな」
「失礼なヤツだな!」
「……好きなのか?」
サンジが低い声で尋ねてくる。
思わずルフィは顔を引き攣られた。
「怖い! お前は何なんだよ!」
「嫉妬してるだけだ」
「うるせー! ナミとは幼なじみで友達だよ! 連絡するのも久々だから、怒られそうで…ちょっと怖い」
赤い顔で照れてからルフィは少し青ざめる。
「どんな女だよ…ま、戦力にはなりそうだな」
「先輩の威厳がかかってるから背に腹はかえられない」
静かに決意していると予鈴が鳴り響いた。
次が移動教室だということを思い出し、ルフィ達は慌て教室へと向かう。
「ま、人数足りなかったら調整してもらおうか」
「うん、そうだな〜」
「あとは放課後を待つばかりだな!」
気合いを入れているウソップを見て、ルフィも頷く。
先を行くウソップに聞こえないようにサンジが話し掛けてきた。
「ルフィ」
「ん?」
「活躍したら、ご褒美くれ」
「うん! …うん? …うっ…ちゃんと活躍したらな」
勢いで頷いたが内容を理解し、否定しようとサンジを見上げた。
しかし、ものすごく嬉しそうなサンジに今さら否定もできないルフィだった。
*続く*