「裏だ!」
ルフィが叫ぶとサンジはゆっくりとコインを隠している手を退けた。
じっと二人がコインを見つめる。
それは表を向いていた。
「よっしゃ! ルフィが罰ゲームだな」
「えー! ……終わった」
ニヤニヤするサンジとは対照的にルフィはガクリと肩を落とした。
「まァそうガッカリするな。無理難題を頼もうと思ってるわけじゃねェからさ」
「ホントかァ? …なんか恐いなァ」
何を言われるのかとルフィはビクビクとサンジを見上げる。
「おいおい、あんまりビクつくなよ…イジメたくなるだろ?」
「うっ…イジメちゃヤダぞ?」
上目遣いでお願いされサンジはニヤリと笑った。
「それ、可愛いな。そういうのは男を煽る。特におれはお前に関して理性が弱いから気をつけろよ?」
「わ、わかった! 気をつけるぞ」
サンジは真剣にうなずくルフィの頭を優しく撫でる。
「じゃあ罰ゲームを発表するかなァ」
「よ、よし! なんでも来い!」
覚悟を決めたもののどこか不安な顔でルフィはサンジを見る。
そんなルフィを見つめながらサンジは爽やかな顔で笑った。
「おれに告白してくれ。好きなところを言うだけでいい」
「えー! は、恥ずかしいじゃねェか!」
「罰ゲームなんだから恥ずかしいこともしなきゃダメだろ?」
「うー…」
「告白、おれからしたよな? お前がおれのどこが好きなのか知りたい」
ルフィは赤面し、モジモジしながら真剣なサンジを見上げる。
「えっと…料理作るトコが好きだ」
「それから?」
「んと…優しいトコとおれの頭を撫でる手」
ニヤニヤ笑いながら先を促す視線でサンジはルフィを見つめる。
「あとは…見たことあんまりないけど戦ってるときもカッコよくて好きだな」
「それだけか?」
「おれのこと助けてくれるトコとか真剣な目とか…もっとあるぞ?」
赤い顔のまま、ニカッと笑いルフィはサンジを見た。
そんなルフィの頭をサンジは嬉しそうに笑いながら撫でた。
「じゃあ嫌なトコは?」
「ない…って言いてェトコだけどあるぞ」
ちょっとだけ不機嫌な顔になり、すねたようにルフィは口を尖らせる。
「へェ? どこだよ……言ってみな?」
サンジはルフィのアゴを掴み、上を向かせた。
サンジの目には少しだけ怒りの色が見えた。
「そ、そういうイジワルなトコだよ!」
「イジワル……ねェ?」
「う〜でも、もっと嫌なトコがある」
「…どこだよ?」
耳元に吐息を吹きかけながらサンジは囁くように尋ねた。
ビクッと肩を揺らし、ルフィは目を瞑る。
「お、お、女にデレデレするトコだ! バカー!」
「バカって…お前…妬いてたのか…」
意外そうな顔をした後にサンジは心底嬉しそうに笑った。
アゴから手を放し、サンジはルフィの頬を撫でる。
「何、笑ってんだァ!」
「そう怒るなよ。妬くってことはそれだけおれを好きってことだろ?」
「そ、それはそうだけど…ムカムカするからイヤなんだよ!」
ルフィは自分が女に声を見たところで気にしないのかと思っていた。
こんな嬉しいことはない。ニヤけてしまうのは仕方がないだろう。
「安心しろよ。あれはアイサツみたいなものだからな」
「わかった。おれはサンジが好きだからな。女に話しかけるのは我慢する…イヤだけどな」
「お前しか見てないから安心しろ。お前の反応を見たくて声かけてたようなもんだしな。本気じゃねェ」
よくわかっていないような顔でルフィはうなずいた。
「じゃあ最後の罰ゲームだな」
「えっ! ま、まだあるのか?」
好きなところを言うだけで終わりだと思っていた罰ゲームはどうやらまだ続きがあるようだ。
困った顔でサンジを見るが当たり前だとうなずかれた。
「ルフィ、お前からキスしてくれ」
「う……えーっ!」
「いっつもおれからじゃねェか。たまにはお前からしてみろって」
困ったようにしていた顔を真っ赤に染めてルフィはあたふたした。
「え…う……で、でも」
「もっとすげェ罰ゲームにしてもおれはいいんだぜ?」
「うぅ……」
サンジはおかしそうにルフィを見ているが違う罰ゲームに変える気はないようだ。
むしろ、変えたら更に恥ずかしいことをされそうだとルフィは肌で感じた。
「どうする、ルフィ?」
「わ、わかったよ〜罰ゲームは一個だけって決めとけばよかった…」
深呼吸をして、サンジを見る。
心臓がドキドキとうるさい。
顔も熱い。
サンジはなんでいつも自分に平気でキスができるのかルフィは疑問に思ってしまう。
「…目、閉じろよ?」
「はいはい」
サンジが目を瞑るとルフィは背伸びをし、チュッと軽く口づけた。
「し、したぞ?」
「…それだけか? まァ最初はこんなもんか。よくできました」
それだけか、と言いつつもその顔は嬉しそうでルフィも嬉しくなった。
「サンジはおれからチューされるのが嬉しいのか?」
「嬉しくないわけねェだろ」
「そっか〜」
サンジが喜ぶならこれからはもう少し頑張って自分からキスするのもいいかな、とルフィは思った。
まだ赤い顔のままルフィはサンジに抱きついた。
「なんだよ? もう一度してくれるのか?」
「き、気が向いたらな」
楽しそうに笑うサンジにルフィは赤い顔を見られないように強く抱きついた。
*END*