「あー…今回も赤点あるかもー追試ヤダー」
「数学、結構難しかったもんなァ。おれも赤点かも」
本日は中間テストの最終日。
全ての科目が終わり、テストの出来栄えにがっかりしつつ、帰り支度をしていると校内放送が流れた。
放送内容は生徒の呼び出し。
ルフィが担任のシャンクスに呼び出されていた。
「何したんだ?」
「何もしてねェよ…まだ今日のテストの結果も出てないだろうし」
「…おれ、閃いたんだけど」
ウソップの言葉にルフィは表情を曇らせる。
「…実はおれも心当たりがあるんです。でも、言わないで…最後まで希望を持ちたいんだ」
「いや、でも放課後なのにすぐにサンジがお前に会いに来てない時点で呼び出し理由も予想が…」
「ウソップのイジワル! おバカ! 言わないでって言ったのに! ダーリンったら嫌いになっちゃうわよ!」
「……サンジの前で絶対に言うなよ、ハニー」
「…うん。悪ふざけが過ぎたな、ごめんなさい。行動予測が地味にできないからこのノリはサンジの前ではやめよう」
ウソップは引き攣った笑顔で応えた。
「おれが絶望的な被害を受けそうだという予測はできるけどな。帰り、待ってた方がいいか?」
部活のない日はウソップとも一緒に下校することがある。しかし、今日は無理だろう。
ルフィは大きなため息をついて、ウソップを見た。
「はァ、とりあえず行って来る〜遅くなるかもしれないから先に帰っててくれよ」
「了解! 健闘を祈る」
「おー、ありがとう」
ウソップに励まされ、ルフィは苦笑しつつ職員室へ向かう。
やや緊張しながら職員室へ入ろうとするとシャンクスが職員室の横にある応接室から手招きしていた。
「こっちこっち」
「職員室じゃないの?」
「お前が行くとややこしさが倍増しそうだからな。応接室で話そうじゃねェの」
シャンクスの言葉にルフィは顔を引き攣らせて、応接室へ入る。
「失礼します」
「ま、座れよ」
促されるまま客人用のソファーに腰掛けてルフィは正面に座るシャンクスを見た。
「何の話があるんでしょうか?」
「お前のことを愛して止まないサンジの話だ」
「教師とはいえ、張り飛ばしますよ?」
爽やかな笑顔でルフィはシャンクスを見る。
いつもなら大笑いしてから謝るのに、今日は少し困った表情をしていた。
「サンジ、何かしたんですか?」
「お前、今回のテストどうだった?」
「は? まァ普段通りというか、数学は確実に赤点だと思います」
世間話のようだが、とりあえず質問に答える。
「我が校の追試っつーか赤点は何点からでしょうか?」
「各テストの平均点の3分の1以下」
「正解。数学追試になりそうなことサンジに言った?」
「言っ…たような気がします」
追試休みに遊びに行こうと言われたとき、追試があるだろうから無理だと言った気がする。
追試の生徒以外は休みの日がこの高校には存在するのだ。
「まさか…サンジも数学、赤点?」
「そうなんだよ。確実に赤点取るために0点だった」
「はァ!? あの阿呆…」
今までで一番脱力したかもしれない話にルフィはソファーに沈み込んだ。
自分ですら0点など取った試しはない。
「恋愛は自由だけど一応、学校は勉強するトコだからな。学業に支障が出ると呼び出しもあるわけだよ。個人的には見逃してやりたいけどなァ。数学教師が泣いてたからさ」
「はい」
「ということで、サンジに説教してくれ」
「はい?」
今まさにサンジは数学教師が説教しているのではないのだろうか。
ルフィの疑問を感じたのかシャンクスが笑う。
「おれ達が言っても全く聞かないんだよな〜。お前に頼むしかねェじゃん。教師としちゃあ情けない話だけど頼むよ」
「……おれが言って聞きます?」
「聞くだろ、絶対。説教っつーか説得だな。期末テストで0点取らないようにしてくれたらありがたい」
「はーい、努力します」
呼んで来ると応接室を出て行くシャンクスの後ろ姿を見ながらルフィはため息を吐いた。
どうやって説教というか説得するか悩むところだ。
多少責任を感じるが0点はサンジの意志で取ったのだから難しい気もする。
ルフィは腕を組み、悩みながらサンジを待つのだった。
*END*