放課後になり、ルフィは携帯を見る。
もう校門前にいるという内容のメールにルフィは立ち上がった。
「じゃあナミを迎えに行くから先にグラウンド行っといてくれよ」
「わかった! サンジも連れていっとく」
「了解!」
あまり待たせるといけないのでルフィは走って校門に向かう。
***
「お〜、ナミ、久しぶりだな!」
「お〜、久しぶり、じゃないわよ! 久々の連絡で嬉しかったのに! 『野球しよう』って…バカなの?」
いきなり睨まれ、ルフィは怯えたようにナミを見た。
「お、怒らないってメールに書いてあったのに…」
「こんなの怒ってるうちに入らないわよ」
「…うん、そうだな。あ、グラウンドはこっち」
「はいはい、やるからには勝つわよ」
意外とやる気なナミに安心し、ルフィは笑顔で案内する。
「うん! 後輩には負けられないもんな!」
「どこの誰だかわからないような相手とデートなんてさせられないものね」
「な、なんで知ってんだ?」
「詳しく知りたいから、あんたの携帯に電話したの。そのときウソップって人が出たわよ?」
「あ〜」
そういえば6限目にウソップからこっそりと携帯を返された。
5限目に寝ているうちに取られたのだろう。
休み時間にナミと話していたのだと予測がついた。
「あと、サンジ君って人とも話したけど…ま、まァ恋愛は自由だものね」
「………何て言ってた?」
「ルフィ、世の中知らなくていいことって、あるのよ。あそこまで言われたらサンジ君を応援したくなるわよ。ファイトよ、ルフィもね!」
「うー! なんかヤダ!」
ルフィは赤い顔で急いで歩く。
それを見て、脈ありじゃないのとナミは呟いた。
***
「うおー! 他校の女子! ルフィ、やるじゃねェか!」
「そういえば私って無断で入って平気なの?」
「うん、今騒いだのは教師だから」
「…そう」
二人して騒ぐシャンクスに哀れみの視線を向ける。
「エースもいるじゃない」
「おー、お前スカートでするの? サービスしすぎじゃないか?」
「…短パンはいてるわよ。体操服着るほどじゃないでしょ」
喋る二人を置いて、ルフィはサンジ達のそばへ向かった。
するとローが小声で話し掛けてくる。
「ちょっと、先輩達のメンバーがバラバラなんですけど」
「文句あるかコノヤロー」
「えー…ま、まァいいですけどね。まさかゾロ先輩までいるとは…話聞いたらルフィ先輩が誘ったらしいじゃないですか〜顔広いっすね」
「あー、偶然だけどな。噂ほど怖い先輩じゃないって」
「それは話してみてわかりましたよ」
ローの言葉に満足してから視線をベンチに向けると笑顔でこちらに手を振る人物がいた。
「うわっスモーカー先生いるじゃん」
「あれ? 知ってるんですか? 体育は1年生しか担当してないと思いましたけど」
「…去年の勧誘地獄は忘れられない」
「別に今から野球部に入ってくれてもかまわないぞ、ルフィ」
スモーカーの言葉に思わず近くにいたローの後ろへ隠れる。
ニヤつくローに気がつかず、ルフィは野球部顧問のスモーカーに警戒の意を示した。
「嫌だよ! おれはスポーツするなら色々したいんだよ!」
「つれないな〜お前は。一緒に甲子園行こう」
「……夏に応援しに行きますよ。うわっ」
思いきり引っ張られ足がもつれる。
よろけたルフィをサンジがしっかりと抱き留めた。
「あ、ありがと…って、お前が引っ張ったんだろ!」
「だって、ローの後ろに隠れるなんてイヤすぎる」
「あ、ああ…ごめん…?」
サンジの不快そうな表情に理由もよくわからないままルフィは謝る。
「も〜、いちゃつかないでくださいよー。ルール説明しますから、先輩方はちゃんと聞いてくださいよ?」
「はーい」
みんな、ローの周りに集まった。
「ルールは大体普通の野球と同じなんですけど、打席に立つ前にくじ引きしてください」
「くじ引き?」
疑問満載の表情でウソップは首を傾げる。
「バット、くじで選ぶんですよ」
キッドが指差す先を見るとごちゃごちゃと物が置いてあった。
普通のバットもあるが、フライパンや教科書、ホウキなど色々と見てとれる。
「今回ボールは野球ボールで確定にしときましたから初心者でも安心です」
「…ちなみにボールもくじ引きの場合をしたことあるのか?」
「もちろん! 鉛筆でバスケットボールを打ったときは指が悲鳴をあげましたよ」
得意げなローにルフィは呆れつつも笑った。
「これって勝負になるの?」
「案外なりますよ〜ボールはまともなんで、そこまで変な組み合わせになることもないですし」
ナミの質問にもローは笑顔で応える。
女慣れしている様子になぜかルフィは納得した。
その反面、そわそわしているキッドにルフィは話しかける。
「キッドはどういう組み合わせが難しかったんだ?」
「えっ!? あー、チョークをバットで打ったときですかね。思いきり打ったら粉々になりました。加減が必要で難しかったです」
「あはは、お前らは本当にアホだな」
おかしそうに笑うルフィにキッドは照れながらも笑った。
その間にローは割り込み会話に参加する。
「目に入ったりしたら危ないって気づいたんで途中からは野球ボールよりでかいもんでしてますよ」
「そりゃそうだな。で、バットが違うくらいなのか?」
「あー、打つのが難しそうなもんで打てたら特別点を適当に入れたりしてますね」
「ふわっとしたルールだなァ」
エースは呆れたように言っているが目が本気だ。
きっとルフィのデートがかかっているのを知っているのだろう。
「えーっと、ルフィ先輩、サンジ先輩、ウソップ先輩、ナミ先輩? とゾロ先輩、エース先生、シャンクス先生の7人でいいですか?」
「ああ、1年も7人か。ちょうどよかったな」
ウソップの言葉にローも頷いた。
「そんじゃスモーカー先生は審判ね」
「了解」
「よし、打順や守備位置決めてから始めましょ! 負けませんからね!」
「1年生に負けられるか!」
1年チームと年上チームに別れて、作戦会議が始まった。
*続く*