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「サンジ、いるか?」
「はい、なんですか?」
朝のホームルームの前にサンジは廊下から担任に呼ばれた。
「ちょっと理事長室まで行ってくれ」
「はァ、分かりました」
「授業遅れても大丈夫だからな」
「はい」
サンジは立ち上がり、理事長室へ向かう。
眼鏡を掛け直し、ため息を吐いた。
(面倒くせェな…素行は完璧だしな。はァ、何の用だか)
普段、優等生のフリをしているので教師からの信用も高い。
成績が良いのを鼻にかけたりしていないので生徒からも憧れの存在だと言っていいだろう。
それだけにサンジは自分が呼び出される理由が分からなかった。
コンコンと理事長室のドアをノックする。
「失礼します」
「お~、入れ」
部屋に入るとダルそうにイスへ腰掛けた理事長のシャンクスがいた。
「何か用ですか?」
「お前のクラスの副担、産休に入っただろ。立ち話もなんだし座れ」
「はァ、そうですね」
促されサンジはソファーに腰掛けた。
「代わりの副担が今日来るんだが……教員免許持ってないんだよな」
「……そんな奴を副担にしていいんですか?」
「ははっ、代理が見つからなくてな。ま、産休の間だけだし、授業を受け持つわけじゃないから大丈夫だ」
自分がここに呼ばれた理由が分からずサンジは怪訝な顔をしてシャンクスを見た。
「可愛い奴なんだがヘマしそうでな。出来るだけフォローしてやって欲しい」
「生徒がフォロー…分かりました。出来る限りのことはします」
「さすが優等生! 助かるよ」
シャンクスの言葉にサンジは顔を引きつらせる。
「失礼しまーす」
「とりあえず、ノックしろ」
「あはは、忘れてた。はい」
ドアを開けたまま急に入って来た人物はコンコンとノックしてから入って来た。
「こいつが例の副担だ。よろしく頼むな」
「よろしく、ルフィだ」
ニカッと笑う姿はとても年上には見えない。
シャンクスが可愛い奴と言っていたので女性と思っていただけに少し驚いた。
サンジはとりあえず立ち上がり頭を下げた。
「サンジです。よろしくお願いします」
「うわ…ちゃんとしててビックリ」
「あはは、おれみたいな生徒ばっかじゃねェよ。まァそれなりにクラスへ挨拶して来い」
シャンクスは面白そうに笑って手を振った。
「了解! 行こ、サンジ」
「……はい」
ルフィは、にっこりと笑ってサンジの袖を引っ張る。
サンジは特に文句も言わず理事長室を出た。
「…あんたさ、ホントに年上?」
「え? 失礼な奴だな。お前より長く生きてるよ」
口を尖らせてルフィは拗ねる。
「見えねェな」
「……なんかさっきと態度、違わないか?」
ルフィは不思議そうに首をかしげた。
「ん? 教師じゃないから猫かぶる必要ないだろ。産休が終わったらいなくなるしな」
「あはは、変な奴~」
「……あんたもな」
怒るわけでもなく、おかしそうに笑うルフィはサンジにしてみれば相当、変だった。
***
放課後、帰ろうとしていたサンジはプリントの山を抱えたルフィに出くわしてしまった。
「サンジ~、運ぶの手伝ってくれ~」
「………はい」
断るわけにもいかずサンジはため息を吐きながら、ルフィが抱えているプリントを半分持った。
「ありがとう」
「ついでに最後まで手伝いますよ。このプリント、三枚ずつに分けるんでしょ?」
「え? いいのか? ありがと、サンジ」
ニカッと笑うルフィにサンジは複雑な顔をした。
皆が帰ってしまった教室で二人はプリントを分けだした。
「なんか無視できねェな、あんた」
「おれが~? そうか?」
「構いたくなる」
サンジの言葉にルフィはポカンとした。
「不思議なこと言う奴だな~。彼女いるんじゃないの? そっちを構ってやれよ」
「別れたばっかりだから今はいねェよ」
「うわ、やっぱりモテるんだな」
「当然だろ。……先生は彼女いないの?」
呼び方に困ったが一応、先生と呼ぶことにした。
「いないよ~。お前と違ってモテないし」
ルフィもモテないわけではないのだが、告白されたことにさえ気づかない鈍さのせいで自分の魅力に気づいていなかった。
「へェ?」
「ちぇっ、別にいいの」
サンジの視線にルフィは口を尖らせた。
「サンジって目、悪いのか?」
「いや、だて眼鏡。優等生に見えるだろ? 実際、優等生だしな」
「あはは、確かにそうかもな」
和やかな空気の中で携帯の着信音が流れた。
「うわっ、おれか! …出ていい?」
「一応、教師として来てるんだろ? 音消しとけよ…はァ、どうぞ」
「以後、気をつけます。もしもし?」
ルフィはペコリとサンジに頭を下げてから電話へ出た。
『ルフィ』
「お~、ゾロ。どうかしたか? おれ、まだ学校にいるんだけど…あれ? 仕事は?」
『もしもし~、私よ。仕事はサボり中』
「ナミもいるのか~。怒られるんじゃないか?」
後ろでゾロが文句を言っているのが聞こえる。
携帯を奪われたのだろう。
『私は平気よ。具合が悪かったって言うから。ゾロは怒られて残業なんじゃない?』
「あはは、確かにゾロは怒られそうだな。ん? でも、サボってまでおれに用事?」
ルフィは携帯を耳にあてたまま首をかしげた。
『その様子なら大丈夫そうね』
「あ、心配してくれたのか? ありがとう」
ルフィは二人の心遣いが嬉しくて笑顔になる。
『初日だしね。あとは変な虫がついてないかよ…すごく不安』
「変な虫? 昆虫のこと? ついてないぞ」
『……それはよかったわ。ルフィはモテるから気をつけてね』
何を気をつけたらいいのかよく分からず、ルフィは自然と困った顔になった。
「何を? というか、お前らの方がモテるだろ」
『あ~、あんたに近寄る連中はゾロが片付けてたからね。私も邪魔してたし…自覚なくて当然か。うん、仕事が終わったら一緒にご飯食べましょ。ゾロの奢りよ』
「え? いいの? じゃあ終わったら連絡するな」
『ええ。じゃあ後で』
最後までゾロがナミの後ろで騒いでいたがナミが絡むといつものことなのでルフィは気にせず通話を切った。
「友達?」
「うん! 高校と大学が一緒だったんだ」
ルフィは楽しそうに笑った。
電話の相手とは本当に仲が良いのだろう。
「大学…入れたんだな」
失礼な考えだが頭が良さそうには見えない。
サンジは思わず呟いていた。
「う、うん。一応」
「苦労したみたいだな」
ルフィは青ざめた後に苦笑いをした。
「めちゃくちゃ勉強したからな…ナミに教えてもらってなんとか合格できた」
「さっきの電話の相手か。晩飯、一緒に食うんだろ? 分けるの終わったし、帰れば?」
「わっ、ありがとう」
電話で喋っている間にサンジは仕分けを終わらせていた。
「別に? 礼を言われることじゃねェし」
「そうだ! 一緒に晩ご飯、食べよ」
「………はァ?」
サンジは怪訝な顔をしてルフィを見る。
にこにこと笑っていて冗談だとは思えない。
(こいつ……アホだ)
サンジは呆れて、ため息を吐く。
教師が一人の生徒を構い過ぎるのはいろいろと問題があるのではないだろうか。
(……教師じゃないから別にいいのか?)
サンジはじっとルフィを見て思案する。
成績さえ良ければ両親から文句はないので一緒に行けないこともない。
「サンジ?」
「別にいいぜ」
「よかった。荷物取って来るから校門で待ってろよ」
サンジは断るのもアホらしいと誘いを受けることにした。
(……なんとなく気になるしな)
自分の感情に戸惑いを感じながらもサンジは深く考えないようにした。
***
「初めまして、サンジです」
サンジはスーツ姿のナミに、にこやかに挨拶をした。
「最近の高校生は背が高いのね。私はナミ、よろしくね。そっちの怖い顔のオッサンはゾロ」
「あはは! オッサン! 痛っ」
大笑いしたルフィはゾロに殴られた。
「おれがオッサンなら同い年のお前はオバサンだろうが」
「………何か言ったかしら?あのこと、バラすわよ」
「すみません…言わないでください」
ゾロは深々とナミに頭を下げた。
変なモノを見る目でサンジがゾロを見ているとルフィがサンジに小声で話し掛けてきた。
「ずっと前から弱みを握られてるんだ。だから、ゾロはナミに勝てない」
「大の男がああなる弱みってなんだよ」
悔しそうな顔をしているがゾロには決して逆らえない空気がある。
「さァな…教えてくれないからわかんない」
「まァ弱みだから普通言わねェか」
「こそこそ喋ってないでご飯食べに行きましょ。お腹空いたわ」
ゾロの運転する車に乗って四人は近くの居酒屋に寄った。
適度に混んでいる店内に入ると店員に空いてる席へ案内された。
「おれ、制服なんですけど」
サンジは邪魔になるので眼鏡を制服の胸ポケットにしまって苦笑いしながら座った。
その横にルフィが座る。
「お酒を飲まなきゃ大丈夫よ。帰り、運転は誰がする?」
「よし! ……公平にあみだくじにしよう」
「負けないぜ」
ニヤッと笑うゾロにナミとルフィもニヤリと笑った。
「サンジ、アンケート用紙の裏にあみだくじ作ってくれ。不正はナシだぞ?」
「ハイハイ」
不正ってなんだよと思いながらサンジは店のアンケート用紙の裏に三本の線を引いて、一本の線の下に負けと書いた。
そして、適当に線を足して下半分を折ってどこがハズレか隠した。
「ほら、できたぜ」
三人は真剣に紙を見つめた。
「じゃあ私はここ」
「おれはここ~」
「残りかよ……仕方ねェな」
それぞれ名前を書いてから紙をめくる。
「えー! おれだ……」
「やった! 店員さん、ジョッキ二つとオレンジジュースとウーロン茶」
「かしこまりました」
ガックリとうなだれるルフィの頭をぺしぺし叩きながらナミは素早く注文した。
「残念だったな」
「ちぇ~、ゾロが連敗すると思ったのに」
「ナミは強いな……いつも勝つ」
「今日は小細工ナシだったから負けるかと思ったけどね」
爽やかな笑顔でナミは今まで不正があったことをバラした。
「な! てめェ…おれが毎回負けるように仕向けてたのか?」
「ええ。次回からは気をつけてね」
「…………チッ」
ゾロは言ってもこの女は懲りないと思い、舌打ちするだけで文句を言うのは止めた。
「二人は付き合ってるんですか?」
仲の良い様子を見てサンジはナミに質問した。
「冗談言わないで。私達はライバルよ。時に協力して邪魔者を排除する。そんな仲よ」
「そういうことだ」
「あァ、なるほど」
サンジは隣に座るルフィを見て、すべてを理解した。
「なに?」
「ワケ分かってないのは本人だけってことか」
「ん?」
一人話題についていけずにルフィは疑問符いっぱいの顔でサンジを見た。
「……おれもライバルに参加しますね」
「やっぱり! 嫌な予感したのよ」
ナミは机に突っ伏し、ゾロはサンジを睨んだ。
「まだ自分の気持ちがハッキリしてないんでライバルになる予定ですけどね」
「……好きになるに決まってるじゃない」
「なんの話? おれも混ぜろよ~」
話の内容的には話題の中心人物なのだが本人に自覚はない。
注文していた飲み物が来たのでこの話は一旦中断した。
賑やかに食事をして、会計をゾロに任せて三人は先に外へ出た。
「サンジ君」
「はい?」
「私達はこの関係崩せなくなってるのかもしれないのよね。どっちかが本気で告白すると、このアホみたいに楽しい関係がなくなるでしょ?」
「……そうかもしれないですね」
ルフィと恋人同士になりたいが今の関係も居心地いいのだろう。
ナミとゾロは告白するタイミングを失ったということだ。
「手を出すなとは言わないけど泣かせたら許さないからね。邪魔もするから」
「了解です、ナミさん」
「フフ、お手並み拝見ってとこかしら」
ナミは不敵に笑ってサンジを見た。
サンジもにこりと笑ってナミを見つめ返すのだった。
***
ナミとゾロを自宅に送り届けた後、車内は自然と二人きりになった。
「…二人とも酒豪だったな」
「よく飲めるよな~。毎回、感心するもん」
二人の酒豪ぶりを思い出し、ルフィは笑った。
「なんかルフィが運転してるの変な感じだな」
「年上を呼び捨てにするなよ~。ま、別にいっか。学校じゃないし。無事故無違反だから大丈夫だぞ」
自信満々にハンドルを握るルフィを見てサンジは笑った。
「そりゃ安心した。あ、ここでいい。この先は道、狭いからな」
「そっか。気をつけて帰れよ」
道の端に車を止めて、ルフィはサンジに手を振った。
サンジは車を降りてから、ドアを閉める。少し考えてから運転手側に周り、窓をノックした。
不思議そうに首をかしげながらルフィは窓を開けた。
「どうかした?」
「おれ、ルフィのこと好きだから」
「な…えっ?」
突然の告白にルフィは固まってしまった。
「冗談じゃなくて本気で好きだ。友情じゃなくて恋愛対象の好き」
「だ、だって今日会ったばっかり……」
ルフィの顔が徐々に赤くなっていく。
「人を好きになるのって時間は関係ねェだろ?」
「そ、そう…かもしれないけど! 急過ぎるって」
「お前、鈍いから言っとかなきゃ、ただの年下のガキだと思って意識しないだろ?」
そわそわと視線を彷徨わせてからルフィは赤い顔のままサンジを見た。
「意識させることから始めることにしたんだよ。油断するなよ? それじゃあ先生、また明日」
「うっ……じゃあな」
「おれのこと考えて寝ろよ?」
「っ! ……アホ!」
耳元で囁かれルフィは顔をさらに赤くして窓を閉めた。
ちらりと手を振るサンジを見つめてからルフィは車を発車させた。
「事故しなきゃいいけど……さて、吉と出るか凶と出るか」
車が見えなくなった方向を見つめてサンジはボソッと呟いた。
***
サンジが告白してから数日が経った。
告白した次の日こそ避けられはしたがサンジの変わらない態度にルフィも普通に接するようになっていた。
だから、ルフィも油断していたのだろう。
「先生、夜ですよ?」
「ん~……」
「全員、帰りましたよ」
「ふえ?」
教室に差し込む月明かりのおかげで、お互いの表情は夜だがはっきりと見えた。
「先生の荷物は取って来たました。学校にはもう誰もいないと思われてるんじゃないですか?」
「な、なに…どういう意味だ?」
寝起きの頭をフル回転させて今の状況を理解しようとするがルフィにはよくわからなかった。
「明日の朝に配るプリントを分けてる途中に寝たんですよ。疲れてたんですね」
前の席に座るサンジがにっこりと笑った。
生徒一人の机を借りて座り作業していたことを思い出す。
教卓を見るとプリントが分けて置いてあった。
「えと…そうだったな。ありがと…でも、なんで夜?」
「邪魔者がいなくなるのを待ってたんですよ」
「……あはは、どういう意味?」
本能的に危険を感じルフィは素早く立ち上がり、後退りして後ろ手で教室の扉を開けようとした。
「あ、れ?」
「どうかしました?」
「開かない」
ルフィはドアの方へ向き直り、もう一度開けようとする。
「鍵が閉まってるから開きませんよ、先生」
「わっ!」
すぐ後ろで声がし、ルフィは驚いて振り返る。
「おれが閉めたからな」
「な、なんで? おれ達が中にいるなら施錠する意味ないぞ」
「あるって……邪魔者がいなくなるのを待ってたって言っただろ?」
サンジから距離を取ろうと移動するが出口から遠ざかるだけだった。
「か、帰ろ」
「明日は休みだし、のんびりして帰ろうぜ」
「ここでのんびりしなくても…いいだろ?」
窓際まで移動すると両肩を押さえつけられルフィは動きを止められた。
「おれ、油断するなって言ったよな?」
「い、言ってた…かな」
「油断しすぎ。隙ありすぎ」
サンジは眼鏡をポケットにしまい、ネクタイをゆるめた。
「……今度は気をつけるから…その…どいて?」
「駄目」
「だ、ダメって…ちょっと」
押し戻そうとする両手を掴まれ、一つにまとめられる。
そして、手首をネクタイで縛られた。
「好きだって言っただろ? 油断するなよ」
「う…だって普通にしてたから」
「わざとに決まってる。警戒されたら近づけないだろ。……我慢してたんだよ」
真剣に見つめられルフィは真っ赤になる。
「おれのことどう思ってんの?」
「わ、わかんない」
ルフィはネクタイを外そうとモジモジと腕を動かすが、きつくなる一方だった。
「嫌いじゃないんだな」
「そりゃあ……そうだけど。サンジのことサンジと同じ意味で好きかどうかはわかんない」
「……試してみるか?」
「えっ……ん、ぅ…」
アゴを掴まれ、上を向かされたと思うとルフィは口を口で塞がれた。
「どう? 嫌か?」
「わ、かん…ない」
恥ずかしさで目を潤ませてルフィはサンジを見上げた。
「……もう一回しろってことか?」
「えっ! ち、違…っ」
ニヤッと笑われ、否定の言葉を塞がれた。
深く口づけされ、息ができない。
無理矢理されているのだがルフィはサンジを嫌だとは思えなかった。
(なんで!? おれ、こいつが好きなのか?)
思考の止まりそうになる頭で必死に考える。
放課後、手伝いをしてくれたときに優しいと思った。
まだ一緒にいたかったから夕食を食べようと誘った。普段なら誘わない。
自分にだけ素のサンジを見せてくれて、嬉しかった。
一緒にいると楽しい。
告白されて……嬉しかった。
(なんだ…おれ、サンジのこと好きだったんだ)
強引なサンジを嫌になれない理由にルフィは納得した。
「ぷは……はァ…ぅ…お、おれもサンジ好き」
「っ! ……なんだよ、それ」
「じ、自覚した」
そんな返答があるとは考えておらず、驚きのあまりにサンジはルフィをぎゅっと抱きしめた。
「すげェ嬉しい…おれもルフィが好きだ」
「うん…サンジ、好き」
ルフィは赤い顔を隠すようにサンジへ擦り寄る。
「おれ、止まらなくなるけどいいの?」
「なにが?」
自分の発言の恥ずかしさに耐えていたルフィはサンジが何を言いたいのかわからない。
「今、そういうこと言うのって危ないんだけど、いいの?」
ルフィが足を閉じれないようにサンジは自分の足を割り入れる。
「へ? う、わっ! どこ触ってんだ! やめ…っ」
「言っていいのか?」
下半身をまさぐる手を止めることなく、意地悪な顔をしてサンジはルフィに尋ねる。
「う、あ…やめ…て!」
「年下にこういうことされるのってどういう気持ち?」
耳元で低く囁かれ、ルフィは恥ずかしさで倒れそうだった。
「も…バカ……んっ」
「止めた方がつらくないか?」
「うぅ…教室、ヤダ」
泣きそうな顔でルフィはサンジを見る。
「なんで? 教室に来る度におれのこと思い出していいんじゃねェか?」
「う~っ! …教室入れなくなるって」
「……仕方ねェな」
教室に入って来なくなればそれはそれで困るので名残惜しそうにサンジは手を止めた。
「もう…アホ、バカ…」
力なくルフィはその場にへたり込んだ。
「あ~、大丈夫か?」
「……今は放っといて」
「ハイハイ」
サンジはルフィの横に座り、ルフィの熱が引くのを待った。
「続きはどこでなら、していいんだ?」
「え!?」
「教室は嫌。それなら別の場所ならいいんだろ」
両手首に巻いたネクタイを外しながらサンジはルフィに尋ねた。
「そ、それは……」
「ちょっと跡ついちゃったな。悪い」
「えっ…いや、別にいいけど……んっ」
少し赤くなった手首を目の高さまで持ち上げられ舐められた。
ルフィは真っ赤になって手を引っ込めた。
「照れ屋だな」
「普通、恥ずかしいだろ! 慣れてる感じがなんかヤダ!」
「ヤキモチ? 可愛いな」
サンジに嬉しそうに頭を撫でられルフィは口を尖らせる。
「お前、年上を敬えよなァ」
「可愛いもんは可愛いだろ。もう大丈夫か?」
一瞬何を言われたかわからなかったサンジの視線を下半身に感じて、ルフィはサンジを睨んだ。
「……誰のせいだと思ってんだ」
「おれだな。で、続きはいつどこでする?」
「し、しないっ」
ルフィは大きく首を横に振った。
「そんなこと言うと今ここでするけど……いいのか?」
「い、いいわけないだろ! こら、触るなって…」
「休み時間にトイレに連れ込んでしてもいいんだぜ?」
「へ、変態だ」
ルフィの言葉にサンジはにっこり笑う。
「わかった。おれが決めてやる。明後日も休みだから明日、おれの家でしよう」
「えー! ヤダ!」
「決定。逃げたら教室でするからな。明日は両親いないし丁度いいな」
逃げ道も封じられルフィは真っ赤になってサンジから目を逸らすしかなかった。
「そりゃあもう優しくしてあげますから安心してくださいね、先生?」
「不安だ…心底、不安」
「あはは、まァ遅くなったし帰ろうぜ」
先に立ち上がったサンジがルフィに右手を差し出す。
ルフィは照れながらも、その手を取った。
「明日が楽しみだな」
「……なんとも言えないです」
ルフィは起こされた勢いのまま抱きしめられた。
「ははは、これから毎日楽しくなりそうだな」
「それは同感」
「いろいろ問題あるけど…ま、おれ達なら大丈夫だろ」
年下の恋人の頼もしい言葉にルフィはサンジを抱きしめ返すのだった。
*END*