「サンジかな」
「へェ?サンジ君の方がなんだ」
「飯がすごくうめェからな!」
「色気より食い気…」
「それに二人っきりのときはすげェ優しいんだ」
「えっ? そうなの?」
「おう! おやつ作って、ってみんなの前で言っても作ってくれねェけど二人きりのときは作ってくれるぞ」
「稼ぐトコで稼いでるって感じね。さすがサンジ君だわ。今の感謝の気持ちをすぐにサンジ君へ伝えて来なさい」
「おう!」


どうなるか楽しみとナミは高みの見物にでた。
まだしつこく言い争っている二人の元へルフィは走って行った。




***




「おーい、サンジ〜」
「どうした?ルフィ」

言い争いを止めてゾロとサンジはルフィを見る。

「おれ、サンジのこと大好きだぞ!」

「「………」」


硬直者二名。


「ん? 固まったのか?」

ルフィは動かなくなった二人を交互につつく。

「ルフィ!」
「わっぷ!」

突然、サンジに抱きしめられルフィは驚いた。

「ほらっ、マリモは退散しろ! 邪魔だ、邪魔」
「……」

ゾロは呆然としたままヨロヨロとその場を離れていった。

「ゾロ? あいつどうしたんだ?」
「あんな奴、気にしなくていい」

ゾロの姿を確かめようとするルフィをサンジは更にきつく抱きしめた。

「さ、サンジ〜。離してくれよ〜どうしたんだよ?」
「おれのこと、好きか?」
「う、うん。好きだぞ」
「マリモのことは?」
「好きだ」
「…まァ、分かってたけど腹立つな」
「ん? なにが分かってたんだ?」
「お前はみんなのことが好きなんだろ?」
「おう! 当たり前だ」

やっぱりな、とサンジは心の中で思った。
ルフィは自分を特別な意味で好きと言ったワケではない、分かっているのに浮かれてしまうのは恋心のなせる力なのだろうか。

「でもサンジが一番好きだぞ?」
「はァ?」

驚きのあまりに再び硬直してしまう。

「おれ、変なこと言ったか?」
「ちょっと黙ってろ」
「?」

サンジは頭の中をフル回転させる。

(一番? 仲間の中で一番ってことか? もしかして恋愛感情がある? …いや、それはねェな)

期待する心をねじ伏せてサンジはルフィの頭にアゴを乗せた。

「そうかそうか。ありがとな」
「…おう。な、なァそろそろ離してくれねェ?」
「嫌だよ。おれは今、傷心なんだ。嬉しさと悲しさで満ちてんだよ。クソ剣士との長期戦に備えてんだから少しは充電させろ」
「よ、よくわかんねェけど…は、恥ずかしいから離して…」
「え!?」

今、コイツ恥ずかしいと言ったか?
ルフィが?
マジかよ?

「ルフィ、離してやるからこっち向け」
「や、ヤダよ」
「いいから向け」

サンジは嫌がるルフィのアゴを取り、無理矢理に上を向かせる。

「う〜」

抱きしめていたから分からなかったがルフィの顔は今や真っ赤になっている。

「ルフィ、なんで恥ずかしいんだ?」

ルフィの耳元でサンジは囁いた。

「な、なんか抱きしめられてるときタバコの匂いがして、サンジの匂いだなって思ったらドキドキしてきたんだよ!」

目が合うのが恥ずかしくなりルフィはぎゅっと目を瞑った。

「へェ? そうだったのか。ルフィ、そのまま目、瞑ってろよ」
「ん…っ」
「やった…マジか? 夢じゃねェよな」

夢だとしても最高だとサンジは思った。

「サンジ? さっき、なにしたんだ?」
「キス」
「え!? そ、それは恋人同士がすることだってナミが言ってたぞ?」

ナミは一体ルフィに何を教えているのだろう。

「ルフィ、好きだ」
「…え? えェ!」
「好き同士、付き合うのは当たり前だろ? おれたちは恋人同士だからキスしても問題ない」
「え? えっ? サンジはおれの恋人なのか?」
「そうだ」
「えー!」

真っ赤なまま驚くルフィにサンジはもう一度口づけをし、抱きしめた。

「サンジはおれのことが好きだったのか」
「まァな。愛してるよ」
「そ、そっか。嬉しいぞ」

ルフィは恥ずかしそうにサンジの背中に手を回した。

「予想外の展開だわ…自覚がないだけでルフィもちゃんとサンジくんのこと好きだったのね、ゾロ?」
「………」
「ダメだわ…反応ない」

真っ白な屍みたいになってしまったゾロは船の隅で体育座りをしていた。

「ルフィにもそのうち恋の自覚が出てくるのかしらねェ。ま、サンジくん相手なら大丈夫……かしらね」

ゾロが屍から復活する頃、再びサンジとルフィ争奪戦が開催されるだろうとナミはため息を吐いた。


「ふふ、私も参戦しようかな」


自分だってルフィが好きだし見ているより参加する方が楽しそうだとナミはイチャつく二人を見て、悪女の笑みで微笑んだ。
















*END*