「ありがとう、サンジ。助かったよ」
「ルフィの役に立ててよかった」
ルフィの課題が終わり、サンジは満足そうに笑う。
多少時間はかかったが、サンジの説明のお陰で理解することができた。
「ウソップはまだか?」
「誰かさんがルフィばかり手伝って教えてくれませんでしたからね!」
「おれ、大体わかったから教えようか?」
「………もう少し自分でしてみる」
ウソップはすぐにでもルフィに教えを頼みたいが、サンジの刺すような視線が怖くてやめた。
「ルフィ先輩、課題終わったなら遊びましょうよ」
目敏く気づいたローはルフィに話しかけるが、別の登場人物に邪魔される。
「おーい、来てやったぞ〜」
「シャンクス先生!」
「だれ?」
首を傾げたローにルフィは誇らしげに説明する。
「お前のために課題始める前にメールしといたんだよ。担任で古文担当のシャンクス先生。本当に来るとは思わなかったけどさ。先生、ローは古文の授業は必要ないってさ」
ローを指差し、ルフィはシャンクスに伝えた。
「なに!? 古文はロマンだろうが!」
「うるさっ」
「まァおれが古文の魅力について語ってやろう。酒頼んでいい?」
「いいわけねェだろ! 魅力なんて語られても困る。せめて、勉強法教えてくださいよ」
「バカ言え、面白いと思える要素がねェと勉強しててもつまんねーだろ。おれの話術で寝食忘れるほど古文にハマらせてやるよ」
「そんなにハマったら、もはや病気だろ!」
ローの隣に座り、楽しげに古文を語るシャンクスを見てルフィは思う。
(そういえばシャンクス先生も基本ボケだったなァ)
呆れるローの代わりにキッドが真面目に聞いているので大丈夫だろう。
「こらー! 何をルフィの横に座っとんだ!」
「あ、エース」
ある意味楽しそうなロー達から視線を戻すとエースが目の前にいた。
シャンクスと一緒に来たのかもしれない。
「お前! ルフィと付き合いたいなら、おれを倒してからだ!」
「よし」
「よし、じゃねーよ! 何で立ち向かう気でいるんだよお前は! 静かにしろ! エースも突然来てふざけてる場合じゃないだろ!」
「「ごめんなさい」」
ルフィに叱られて二人はうなだれる。
ウソップは苦笑いして、自分の隣へエースを呼んだ。
険悪になりそうになるとエースとサンジの足を思いきり踏むという役目がルフィにできたのだった。
***
ウソップの宿題が終わり、キッドの古文に対する洗脳が終わった頃、七人はファミレスを出た。
駐車場へ向かう前にエースは、伸びをしているルフィに声をかける。
「車で帰るか?」
「あ〜」
ルフィはローといがみ合うサンジをちらりと見て、エースに視線を戻した。
「いや、電車で帰るから大丈夫。そんなに遅い時間じゃないからさ」
「そう、か? ま、気をつけて帰れよ」
「うん、お気遣いありがとうございます」
ルフィが丁寧にお辞儀をするとエースはおかしそうに笑った。
「あはは、なんだそれ」
「エースっておれのことになるとちょっと変になるからさ〜。寛大になったなァという感動?」
「あはは、問答無用で連れ去りたいけどな。お前の意思も尊重しなきゃ嫌われちゃいそうだからな」
「あははー目が笑ってなくて怖いよー無理矢理、連れ去るのは誘拐だからな! うわっ」
突然腕を引かれ、ルフィは驚く。
腕を引いたのはサンジだった。
「ルフィ、帰ろう」
「お、おお。じゃあな、エース、シャンクス先生」
「ああ、気をつけて帰れよ」
ふて腐れたような顔のエースとおかしそうに笑うシャンクスに見送られ、ルフィ達は駅へ向かった。
「車で帰らなかったんだな」
先を歩く三人を見ながらサンジは小さな声で話す。
「え? 聞いてたのか?」
「ううん。あの保健医、そういうこと言いそうだと思った」
「そ、そっか。うー、電車で帰りたい気分だったんだよ! 悪いか!?」
別に理由など聞かれていないのに謎の照れが原因で言い訳してしまう。
ルフィは赤くなった顔を隠すようにサンジから顔を逸らした。
「悪くない。嬉しい」
ちらりと視線を向けると本当に嬉しそうなサンジの笑顔。
それを見て、車で帰らなくてよかったとこっそり思うルフィだった。
*END*