生物の授業が早く終わり、実験の片付けをウソップに任せてルフィは教室に戻っていた。
この授業時間が終われば昼休み。つまり、購買のパンを買うためだ。
早く行けば空いていて買いやすいし、何より食べたい人気の種類が残っている。
ウソップの分も購入するのでできるだけ急いだ。
1組の前を通るとき、ちょうどサンジが3組担任の古文教師シャンクスに注意されていた。
珍しい光景についつい立ち止まる。
廊下側の窓が中途半端に開いているので教室内の声もよく聞こえた。
「おいおい、いくら秀才だからって授業中はおれの話を聞け。ぼーっとして何考えてたんだ?」
「すみません、ルフィのこと考えてました」
「ルフィって…3組の?」
「はい。四六時中考えていたいくらい、すごく好きなんです」
ざわつく教室内。
立ち止まるんじゃなかった。
動揺のあまり身動きが取れない。
まさか、授業中でも平気であのような戯言を言ってるのではないだろうな。
不安と羞恥で眩暈がした。
動けずにいると、そうかと呟きサンジから自然に目を逸らしたシャンクスと目が合う。
憐れみを含んだ眼差しに発狂したい気分だ。
シャンクスの視線に気づいた1組のメンバーがルフィのいる廊下側を見ようとしていて冷や汗が浮かぶ。
「あー!! あれ何だ!?」
シャンクスは大声を上げて、廊下とは反対側の窓を指差した。
クラス中が外に注目した瞬間、シャンクスが早く行けと口パクしてルフィを見る。
さすが信頼の置ける担任教師。
心の中で褒めたたえながらルフィはシャンクスに深くお辞儀し、その場から逃げ出した。
(あの阿呆め! 生活指導されてしまえ!!)
素行も良いサンジには縁のない話だろう。
サンジとクラスが別で、よかったのか悪かったのか全くわからない。
きっと、また知らない生徒に指差され、笑われるんだ。
自分の境遇に泣けてくる。悲しみを通り越して、大笑いしたい気分だ。
とりあえず昼休み、サンジに会ったら手加減抜きの飛び蹴りを前置きなしでしてやろう。
*END*