「職員室でもサンジとルフィは話題の的だぞ〜よかったな」
「…よくない。教師なら止めてよ」
「恋愛は自由だからなァ」

担当教師に急用が出来たのでこの授業時間は自習になった。
ということで、ルフィとウソップ、見張り教師シャンクスで教室の隅に座り、ダラダラと話をしている。
実際は自習時間というより自由時間だ。
予習復習、宿題をしてもいいし、あまり騒ぎ立てないなら喋ってもいい。

「一部、好奇の眼差しから同情に変わり始めてるらしいぜ? お前じゃなくて、サンジにな」
「ほ、本当に?」

ウソップの言葉にルフィは驚いた。

「本当。まァ一部っつーのは1組の奴らだ。カッコイイ男が一途な愛を貫くと応援したくなるんじゃねェのか?」
「はた迷惑にも程がある! 早く女のコと付き合えばいいのに…最近告白されてねェのかな」
「されてるぞ」
「え? いつ?」

予想外のセリフにルフィは目を瞬かせる。
ルフィと一緒にいるときは全くそのような素振りはなかった。

「お前の近くにいないとき。今まで誰とでも付き合ってたのに、ルフィに告白してからは誰に告白されても断ってる。あいつ、真剣だぞ?」
「……あー…そう、なんだ」
「ご感想は?」

ニヤニヤと笑う悪趣味な担任の質問にルフィは目を逸らして応えた。

「…聞くんじゃなかった」
「ははは、サンジがルフィを諦めるより、ルフィがサンジを好きになるのが先かもな」
「っ!?」

笑うシャンクスの言葉にルフィは電流が走ったような衝撃を受ける。

「なんだ? そのリアクション」
「お、おれがサンジを好きに? 考えたこともなかった…」
「あー…ちょっとサンジに同情した」

そういう可能性も無きにしもあらず、それを考えると妙に落ち着かない気分になった。
呆れたようなシャンクスを尻目にルフィは頭を抱える。

「あ、ルフィ」
「んー?」

何事かを思い出したような様子のウソップにルフィは視線だけ向けた。

「お前、1年のときの4月17日、サンジに何かした?」
「はァ? 去年の4月17日…? いや、憶えてないって。ウソップだって憶えてないだろ?」
「憶えてない憶えてない。でも、サンジはその日、お前に惚れたって言ってたからさ。なんかイベントでもあったのかと思って」

ルフィは首を横に振る。
初めて聞く話ばかりで頭が疲れてきた。

「記憶にない! おれはサンジに特別に接した憶えはないぞ!」
「うーん、やっぱりサンジ本人じゃないとわかんねェか」
「ま、何にせよ、ちゃんと答え出してやれよ?」

少し真剣なシャンクスの眼差しにルフィは口ごもる。

「…う、うん」
「あ〜、返事を待たせてる自覚はあるのか」
「ある、けど…う〜…はっきり言ってよくわかんないんだよな……付き合うとか…わかんねー」

悩み出したルフィの頭をガシガシと撫でて、シャンクスは笑った。

「はっはっはっ、悩め悩め」
「鬼教師だな…まァ、一回確認しとけば? 現状確認というか、サンジがどうしたいのとかさ」
「わかった。放課後、聞いてみる」

ウソップの言葉にルフィは頷く。
確かに今のままというのはよくないのかもしれない。
はっきり言ってやらないとサンジも次の恋に向かえない。

そう考えたとき、心のどこかがちくりと痛んだ気がした。



























*END*