サンジは最近気づいたことがあった。
普段なら気にしないような些細なことなのだが一度気になると、もう気になって仕方ない。

「…やっぱりな」

キッチンに一人になったときサンジは呟いた。
初めて気づいたときは気のせいかと思っていたが、どうやらそうではないようだ。

ルフィは自分と二人きりになるのを避けている。

いつもなら昼食が少ないだの、おやつが食べたいだの騒いでいるはずだ。
しかし、他の仲間に各々することがあった今日は駄々の一つもこねないでキッチンから出て行った。
一度だけじゃないし、キッチンに限った話じゃない。
似たようなシチュエーションのときは必ずと言っていいほどサンジと二人きりになるのを避けていた。
よくよく考えればルフィがサンジに話し掛けるときは仲間が近くにいた気がする。
記憶の糸を辿れば、ウソップだったりチョッパーだったり、もしくは他の奴だったり誰かしら必ずいた。

「さて、なんかしたかな」

別段、男と二人きりになれないぐらいで気にすることはない。
もしも、避けられる相手が女性だったらすぐに気づいただろうし、対処もしただろう。
仲間とはいえ男に避けられて気にすることもない。
しかも、他のクルーがいるときは普通に接して来るのだから何も問題はないようにサンジは思った。
ただ、相手はあのルフィだ。
明るく活発で人見知りをしない。
誰とでも仲良くなれるといっても、それは過大評価にはならないだろう。
何か企んでいるのかと警戒するのもバカらしいほど子供だ。
そんな相手に避けられているという事実にひどく興味を惹かれた。
なんだか、それがおかしくて笑いそうになる。
サンジは沸き上がる不思議な感情を抱えたまま、ルフィを探しにキッチンを出た。



※※※



しばらく探すと食料庫の中で物陰に隠れるルフィを見つけた。

「ルフィ、何してんだ?」
「サンジ? チョッパーとウソップの用事が済んだから、かくれんぼしてんだ。騒ぐと見つかるから黙っててくれよな!」

ルフィは、しーっと人差し指を自分の口にあて、サンジを見る。
ニカッと明るい笑顔を向けられて、避けられていると感じていたのは気のせいかと思ってしまう。
しかし、二人きりになればわかることだ。
無言のまま、そこから動かないサンジにルフィは不思議そうに声を掛けた。

「なんだァ? どうかしたのか?」
「いや、二人きりだと思ってな」

わざわざ二人きりということを意識させるようにサンジは話す。

「はァ? なに言ってんだ?」

不思議そうなルフィの口調は変わらない。
ただ、身に纏う空気が少し変化した。

「もしかして考え事? それなら、おれ他の場所に隠れるから存分に考えてくれよ」

この場から離れようとするルフィを見て、サンジは確信する。
やっぱりな、そう思うと軽快な気分だ。
サンジは自分の身体で、外側へと続く出入口を塞ぐ。
キッチンに続く扉は今、食料庫側から開かなくなっている。
フランキーに言えばすぐ直してもらえるのだろうが忘れていた。
それが今は好都合だ。お陰でこちら側の出入口を塞ぐだけでルフィは外へ出られない。

「なんだよ〜? 出れないじゃんか」
「船長さんはおれを避けてるよな? 正確にはおれと二人きりになるのを」
「………」

サンジの言葉を聞いた途端、ルフィは不思議そうな顔から無表情になり、最終的に嫌悪を浮かべた。
見たことのない表情にサンジは少しだけ呆気に取られる。

「なんだ、気づいたのか」
「ってことは確信犯?」
「当たり前だろ? メリーに乗ってるときから避けてんだからな。まァ、よく気づいた方なんじゃないか? 一生気づかねェと思ってたし」

自分の目の前で嘲笑しているのは誰だ?
分かり切った疑問にサンジは不思議な感覚でルフィを見つめた。
敵にだってこんな表情をしているルフィを見たことはない。
怒りや戸惑いはなく、驚きとルフィに対する興味だけでサンジは埋め尽くされる。

「それはそれは、お褒めいただき光栄です。そんで、船長はおれをどう思ってんの?」
「仲間として、コックとしては信頼してるし尊敬してる。一人の人間として見たら…」
「見たら?」
「大嫌いだ」
「へェ?」

小気味よいほど、はっきりとルフィはサンジを嫌いだと言った。
悲しみや怒りはない。むしろ、感嘆さえ覚える。
ゾロ相手にでさえここまで嫌悪感を露わに嫌いだと言われたことはなかった。
まさか、ルフィから言われるとは今の今まで思いもしない。

「そういうわけだから退いてくんねェ? かくれんぼの途中なんだ」

にっこりと笑うルフィの顔を見た瞬間、サンジは背筋がゾクゾクした。
演技ではなく、本当に心から笑っている。
これから大好きな仲間と会うから、サンジが退ければ二人きりではないと肌で感じられるから。
ルフィは完全にサンジと二人きりだと本能的に感じたときだけ、先程のような態度になるのだ。
意識してではなく、無意識に。

「もう少し話そうぜ、ルフィ」

その言葉を聞いた途端、ルフィは怒りも露わに舌打ちをした。

「サンジって耳悪いのか? さっきの話聞いてただろ。お前と二人きりになると反吐が出そうなんだよ…早く退けろ」
「お前って魅力的な奴だったんだな」
「はァ?」

さっさとこの場から出たいのだろう。
ルフィはイライラしながらサンジを見てきた。

「ただのアホなガキだと思ってたけど見直した」
「お前がおれをどう思うかなんて興味ないんだよ」
「ははっ、ホントに最高の気分だ」

ルフィにここまで嫌悪されているのは自分だけ。
こんなルフィを知っているのは世界中で自分一人だけ。
変な優越感にサンジは楽しそうに笑った。
そして、ルフィのアゴを優しく掴む。

「触るな」

キョトンとした表情のあと、ルフィは無表情に素早くサンジの手を払いのけた。
サンジは歪んだ表情で笑う。

今も自分を見る嫌そうな目に堪らなく興奮した。
正直、どんな魅力的な女性と一緒にいるよりも気分が高揚している。
男に、しかもこんな子供に性的に興奮する日が来るなんて夢にも思わない。

「…何だよ」

このまま放置すれば、壁を壊してでもここから出て行きそうだ。

(おれを殴ってでも出て行けばいいのに)

ルフィは本気で仲間を傷つけることはしない。
いくら本気の喧嘩でも本能的に手加減してしまうものだ。
どんなにサンジを嫌っていても、仲間だという認識がルフィの根本にある証拠だ。

「へらへらすんなよ、イライラする。はァ、話になんねェな。フランキーに直してもらうか」

普段から想像出来ないような声音で、普段から想像出来ないような言葉を吐いた。
そして、サンジの予想通り壁を壊そうとする。
サンジはその腕を掴み、振り返るルフィのアゴを再び掴んだ。
手を振り払う暇を与えず、ルフィの口を塞ぐ。自分の唇で。

「っ!?」

何が起こったか理解できないようにルフィは動かない。
それをいいことにサンジはさらに深く口づけた。
お互いの舌が触れ合ったときルフィは我に返る。
噛み切ってやろうかと思った瞬間にサンジはルフィから離れた。

「……てめェ、悪ふざけもいい加減にしろよ」

少しだけ紅潮した頬。
そんな自分が許せないのかルフィは苛立ちながら自分の口を何度も拭う。
嫌っている相手にキスされるなど屈辱以外の何物でもない。

「顔、赤いじゃねェか…初めてだったのか?」
「っ!」
「図星か? はは、可愛いじゃねェか。うん、よく見りゃお前って可愛いな。たかがキスぐらいで赤くなるなんて。しかも、相手は嫌ってる奴なのにな?」

ルフィの感情を逆撫でするようにサンジは笑う。
挑発には乗らないというようにルフィは怒りを吐き出すように深いため息を吐いた。
同じ空間に仲間がいることを想像して、ルフィはにっこりと笑う。

「今日のサンジは冗談ばっかりだな」
「いやいや、ルフィに俄然興味が沸いて来てな。さっきの反応も予想以上だ」
「もうすぐ次の港に着くだろ。欲求不満ならそこで女を買え」

ルフィの笑顔はすぐに崩れた。
やはり、想像では限界があるようだ。
しかも、サンジに興味を持たれるなど不快でしかない。

「へェ? 何も知らないみたいな顔してんのに男女の営みはご存知でしたか?」
「おれを何だと思ってんだ。この年代の男が知らないわけないだろ…お前と話してるとイライラする。何度も言わせるな」

意外そうな態度に腹が立つ。
経験こそないものの性的な知識も世間一般程度はある。
それにしても、話の流れがおかしい。
ルフィは一刻も早く目の前の男から離れたかった。

「冷たいこと言うなよ。相手してくれてもいいだろ? 仲間なんだから」
「ヒマなら他の奴に構ってもらえよ」
「そういう意味じゃねェよ、ガキだな」

突然、後頭部を強く打ちつけるほどの力で壁に押さえつけられた。
嫌がるより先にサンジの言葉が続く。

「お前の身体で、おれの性欲を満たしてくれって言ってんだよ」

サンジの言葉を理解した瞬間、ルフィは吐き気がした。

「…嫌に決まってんだろ。頭おかしいんじゃないか?」
「なんだ、嫌なのか。じゃあナミさんにでも相手を頼もうかな」

脅しにも取れる言い方にルフィの顔が歪んだ。

「ナミが同意するならいいんじゃないか? お前、女には優しいから無理強いはしないだろ」
「随分と褒めてくれるんだな」
「そういうことだから退けよ」

話は終わりだとでも言わないばかりの空気を放って、ルフィはサンジを見た。

「お前さ、今の状態から簡単に逃げられると思ってんだろ」
「?」
「自分は力強いし、暴れたら簡単に逃げられるってさ、そう思ってんだろ? でもな、押さえ込み方ってのがあるんだよ」

ルフィは試しに身体を動かそうとしてみる。
その瞬間、ルフィの顔が驚愕に彩られた。

「っ…てめェ」
「な? 動けないだろ」

手も足もびくともしない。
楽しくて仕方がないというように笑うサンジをルフィは心底憎いと思った。

「こんな風に女を押さえ込むこともあったりしてな」
「!?」
「男を押さえ込むより遥かに簡単だ」
「…最低だな」

吐き捨てるようなルフィの言葉と軽蔑の視線にサンジはニヤつく。

「まさか、ナミさんやロビンちゃんにはこんなことしない」
「それを聞いて安心した。ナミとロビン…他の奴らにも酷いことしたら、おれが許さない」
「他の奴? ははっ! しねェよっつーか勃たねェって」

最高の冗談を聞いたような爽快な笑い方に今のルフィが腹立たないわけがなかった。

「おれみたいなガキ相手にはしっかりと興奮してるみたいだけど?」
「あァ、今はお前の行動全部に欲情する」

硬くなった男の証を押しけつられて吐くかと思ったが、サンジ相手に不様なところは見せたくない。

「変態だな。二人きりのときもみんなと同じように接したらいいのか? そうしたら興味をなくしてくれんの?」
「嫌いな相手にみんなと同じような態度が出来るのか?」
「どう考えても興味持たれるよりマシだろ。サンジはバカだなァ」

ルフィは今までのことが全て冗談だというように、ニカッと笑った。

「今さら態度変えられても、興奮するだけだぜ?」

そのセリフに冷めた顔でルフィはサンジを見る。

「どうすれば興醒めすんの?」
「おれとするのそんなに嫌か?」
「お前にどうこうされるぐらいなら海軍にマワされる方がマシだ」
「言ってくれるじゃねェか。ホントに…めちゃくちゃにしてやりたくなる」

耳元で囁かれ、ルフィはサンジを睨んだ。

「どっかに閉じ込めて快楽に堕ちるまで犯し続けてやりてェな」
「冗談だろ? おもしろくも何ともねェよ」

心底、嫌そうにルフィはサンジを見た。
その態度に興奮したようにサンジはルフィに身体を密着させてくる。

「その嫌がる顔が快楽で歪むとこが見たい」
「知るか! 放せよ!」
「嫌いな相手に無理矢理イかされるってどんな気持ちなんだろうな? あとで感想を聞かせてくれよ」
「退けよ!」

身体は動かない、同じ男に抑え込まれている屈辱にルフィの語気も強くなる。
そして、耳を塞ぎたくなるような言葉達にルフィは焦りが募った。
ここで怯えるわけにはいかない。
サンジを喜ばせるのだけは嫌だった。

「ぐちゃぐちゃにしてさ。自分でねだるまで見てようか? あ〜、自慰させるのも面白そうだな」
「うるせェ!」
「怖いのか?」
「っ…違う!」

情欲の滲む目、興奮した声音。
ルフィはこんなサンジを見たことがない。
バカみたいに女に媚びるとこしか知らない。
欲望を抑えようともしないサンジは知らない。

嫌われることは容易に想像出来た。
しかし、自分が性の対象になるなど考えもしなかった。

腹が立つ
気持ち悪い
嫌だ
…怖い。

そう、強がったところで屈辱より恐怖の方が強い。

「観念しろって…溺れるほどの快楽を与えてやるからさ」
「っ…チョッパー!!!」

ルフィはありったけの声で叫んだ。
その行動にサンジは驚き、押さえ込む力を緩めてしまう。
その隙をルフィは見逃さず、サンジから素早く距離を取った。
サンジが何か言う前に食料庫の扉がバタンと開く。

「あ〜、ルフィ見っけ! あはは、呼んだらわかるぞ」
「あはは、ちょっと休憩〜サンジもかくれんぼしたいんだって」
「そうだったのか!」
「…まァな」

チョッパーの嬉しそうな顔にサンジは笑って頷く。

「おれがまた鬼? それともウソップも呼んでジャンケンする?」
「後から参加だし、サンジが鬼でいいだろ〜ということでチョッパー、隠れるぞ!」
「よし! おれ、先に行くぞ〜」

チョッパーが飛び出て行ったあと、ルフィも食料庫から出ようとして立ち止まる。
そして、侮蔑を含んだ顔で振り返った。

「ソレ、一人で慰めてから探しに来いよ? じゃあな」

鼻で笑ってルフィは食料庫から出て行く。
チョッパーと楽しそうに隠れる場所を探す、笑い声が聞こえた。
サンジは楽しくて笑いが止まらない。
かくれんぼの鬼をしているなら周囲に気を配っている、しかも耳のいいチョッパーをわざわざ呼んだのだろう。
普段にはない機転の利かせ方だ。
チョッパーの登場に動揺してしまった自分が滑稽で堪らない。

「はは、今回は負けにしといてやるか。しかし、勿体ないことをした」

あのルフィに今まで気づかなかったなんて。
簡単に堕ちない方が面白いのだとルフィは気づいているのだろうか。
泣いて叫んでも止めることなく、優しく激しく快感を与え続けてやりたい。
最後には泣いて許しを請うのか、それとも強がって見せるのか。
そのどちらでも確実にサンジを楽しませる。
もしかしたら、予想外のことをしてくるかもしれない。
考えるだけでゾクゾクした。

まさか、今日で諦めたなんて思ってはいないだろうか。
それでは、つまらない。

どんな極上の女を落とすときより気分がいい。
こんな気分は初めてだ。
面白い、楽しい、嫌がる態度にひどくそそられる。
ルフィに飽きることなんて一生ないとサンジは直感し、笑う。
きっとルフィは自分なんかに堕ちてはこないから。

(強い精神力でどんな目に遭わせても、壊れず、自分を見失わず、おれを楽しませ続けるんだろうな…)

痛みなど欠片も与えず快楽のみを与えてやると、どんな顔をするんだろう。
そう考えるだけで嗜虐心と加虐心を煽られる。

みんなの前では変わらずに接してくるのだろうかと考えると自然と笑えた。
そのときはいつも通りの態度で付き合ってやろう。いや、ルフィは演技をしているわけではないのだった。
自分と二人きりになったときだけ、不快なのだ。
それが愉快でならない。

いっそ狂えたら楽になれると思わせるまで追い詰めてみたい。
今まで何も思わずルフィに接していた自分が愚かに思えるほど、サンジはルフィに溺れていた。

「次の港町に海軍はいるかなァ」

海楼石で出来た手錠が欲しい。
海軍のお偉いさんなら持っているだろう。
手に入ったら……さて、何に使おうか。



※※※



「ウソップにもサンジが鬼になったって言わなきゃな」

二人で隠れ場所を探しているときチョッパーは鼻を動かしてルフィを見る。

「あれ? ルフィ、サンジのニオイがするぞ?」
「サンジの?」

ルフィは自分の腕を匂ってみるが、特にわからなかった。

「煙草のニオイだな〜今度おれが鬼になったらルフィもサンジもすぐに見つけられるぞ〜」
「えー! それは困るぞ」
「えへへ〜それじゃあおれ、こっちに隠れるな」

チョッパーは楽しそうに笑って、みかん畑の方に走っていく。

「サンジのニオイ? ……くそっ」

自分ではわからないが、密着していたせいで煙草のニオイが移ってしまったのだろう。
一人になったルフィは顔を歪めた。
嫌だ、嫌過ぎる。
叩いて消えるものではないとわかりつつ、苛立たしげに服を何度も叩く。
今すぐ、風呂に入りたい。もしくは海にでも落ちれば、ニオイは消えるだろうか。

「……ダメだな」

今の状況で海に落ちた自分を助けに来るのは高確率でサンジだ。
さきほどの出来事のあとだ。触れられるなど、虫唾が走る。

「ま、一時の気の迷いだろ…」

町で女でも買えば少しはスッキリするだろう。
よく考えれば長旅だった。欲求不満になるのも仕方のないことかもしれない。
妙な勘違いも、町に着けば直るはずだ。
男に欲情されるなど、サンジに欲情されるなど二度と体験したくない。
サンジの雄の感触を思い出し、吐き気までも戻ってきた。
まさか、あそこまで変態だとは思わなかった。
しばらくは仲間がいても傍にいたくない。

「はっ、別にいいか。どっちでも」

自分に興味を持つなど不快でしかないのも事実だが、気にするのもバカらしいとルフィは思った。

女好きがいつまでも男の自分にこだわるなど考えるだけ無駄か。
さっさと興味も失せて、いつもの様に女にだけこだわるようになるだろう。

それに、サンジに捕まらない自信がある。
あんな男に押さえ込まれるなど、今日が最初で最後だ。
今日のようなことになれば、気絶するほど殴ってしまえばいい。
ナミに怒られるかもしれないが、理由はケンカということにしよう。
きっと二人きりにならなければ、大丈夫だ。

「おーい、ルフィ〜こっちこっち」
「お〜、ウソップ! 鬼はサンジだぞ」

ウソップの声がして、ルフィはにこにこと笑いながら近づく。

「チョッパーに聞いたぜ〜しっかし、サンジがかくれんぼしたいなんて珍しいな」
「ヒマだったんじゃねェか? 食料庫にいるよ」
「ま、そういうこともあるか〜よし! ここは手を組んで夜中まで隠れきるぞ〜かくれんぼの鬼になったことを後悔させてやるぜ」
「えー! 晩メシは!?」

ルフィはウソップの言葉に口を尖らせた。
そんなルフィを見て、ウソップは勢いよくルフィの胸倉を掴む。
もちろん冗談なのでルフィは笑っている。

「このバカチンがァ! そんな心意気じゃあ、すぐ見つかるだろ! やっぱりチョッパーも呼んで作戦会議だ! ってすぐに探しに来るか?」
「あはは、まだまだ大丈夫じゃねェかな」

胸倉を掴んでいた手を放し、ウソップは首を傾げた。
ウソップが気づかないほど微かに蔑みの視線を食料庫の方に向けてルフィは話す。
向き直る頃には、いつもの笑顔なので気づきようがなかった。

「そうか! よし、チョッパー集合! おれ達の底力を見せるときが来たぞ!」

ルフィ達は隠れる場所を考えて、あれやこれやと思案する。
バカ騒ぎする三人のいつもの光景だ。
船は何もなかったように穏やかな波に揺られている。
しかし、いつもの船内で変わったこともあった。
ルフィとサンジの関係だ。
だが、それには誰も気づくことはない。
気づくとすれば、当の本人達ぐらいだろう。
そして、これからどうなるのかもルフィとサンジにしか、わからないことだった。




























※END※