ルフィ、サンジ、ウソップの他には誰もいない屋上で三人は昼ご飯を食べる。
食べ終わると同時にサンジがそわそわしながらルフィを見てきた。

「ルフィ、大好き。今日、両親いないんだ。よかったら、おれの家に泊まらないか?」

ルフィはにっこりと笑って、サンジを見る。

「もちろん、お断りします」
「うん、今は仕方ないよな。大丈夫、簡単には諦めないから」
「何一つ大丈夫じゃねェよ! 潔く諦めろや! なんで家に泊まるの両親いないこと宣言するの!?」
「それは…言ってもいいのか?」
「顔を赤くするな! おれに対する下心を捩伏せろ!!」
「おれ、いない方がいいか?」
「あァ、帰れ」「いてください!」

二人の同時の正反対なセリフにウソップは生暖かい笑みを浮かべた。

「ちょっとウソップ、こいつに可愛い女のコ紹介してやってよ!」
「無理だろ…紹介されたい女のコは多いだろうけど、サンジがルフィ一筋だから」

サンジはウソップの言葉に深く頷く。

「うん、そうなんだ。おれはルフィを愛してるから他はいらない」
「あー、ノド渇いたなァ! 誰か飲み物買って来てくれないかなァ! そんな気の利くことされたら好きになっちゃうかもなー!」
「おれ、ジュース買って来る!!」

駆け出して行ったサンジの後ろ姿を見てから、ウソップはルフィを見た。

「小悪魔だな」
「違う! あんな空気、一般人には耐えられねェだろ」
「そうだけどさ。付き合う気がないなら徹底的に避けたら? さすがにサンジも諦めるんじゃねェの?」
「…だってサンジ、友達だもん。無視はできねェよ」

ウソップは変わり者のサンジの奇行に違和感なく耐えられるのはルフィだけだと思っていたりする。
友達にしろ恋人にしろ、サンジにはルフィが必要だろう。

「おれは親友がホモになっても気にしないから」
「…嬉しいけど、サンジは友達だからな。はァ、噂なくならねェかなー」

廊下を歩く度にこそこそと噂されていて気が滅入った。
クラスメート達はルフィを庇ってくれるが、クラスメートではない人数が圧倒的に多すぎる。
ウソップは無表情でルフィを見た。

「…おれもいつの間にか噂に入ってんだよなァ」
「え?」
「サンジと取り合ってるんだってさ、ルフィを」

しばらくの沈黙。
階段を駆け上がる音が聞こえて、二人は不自然なほど晴れやかに笑った。

「「あははは!」」

笑い続けた。もう笑うしかない。
戻ってきたサンジは二人の爆笑の意味がわからず、両手にたくさん飲み物を持ったまま不思議そうな顔をした。

「? ルフィ、飲み物! おれのこと好きになった?」
「なりません」
「…そっか」

しょんぼりしたサンジにルフィの良心が痛んだ。痛む必要などないのに。

「でも、めちゃくちゃ嬉しい。ありがとう、サンジ」

ルフィに満面の笑みでお礼を言われて、サンジのテンションが変になった。

「! ま、まだ必要なら買って来るけど? 自販機、持って来ようか?」
「いらねェよ! 自販機持って来るだなんてどういう発想だ…しっかし、大量に買ったなァ。よし、三人で飲むぞ」

好きな飲み物を手に取ろうとして、ルフィの動きが止まる。
大量にある飲み物のほとんどがルフィの好きなものだった。

「ルフィ?」
「……ありがとな」
「どう致しまして」

先程とは違う、照れ隠しのぶっきらぼうなお礼。
それでもサンジは嬉しそうに笑った。
そんな二人を見て、ウソップはこっそりと苦笑する。

(もう付き合えばいいのに)

そう思いながら、ウソップはルフィ好みのジュースを1本開けるのだった。






























*END*