「ルフィ、南の方角に島が見えるのよ。でも地図には載ってない……どうする?」

地図と双眼鏡を見比べながらナミは甲板で青空を見上げて寝転がっているルフィに話し掛けた。
するとルフィは勢いよく飛び起きた。

「寄る! 最近、何もないじゃねェか〜地図にない島……冒険の匂いがするぞ!」
「それもそうね。気晴らしに寄ってみますか」
「やったー!」

嬉しそうなルフィの様子にナミは笑いながら帆を張るように指示した。

島が近づいて来るとルフィは首をかしげた。
その様子を見て、チョッパーも首をかしげる。

「ルフィ、どうかしたのか?」
「ん……いや、なんでもねェ」
「そっか」

ルフィにニカッと笑われ、チョッパーも安心したように笑う。

「みんな船を降りる?」

島に到着し、ナミは甲板に出ているクルーに尋ねる。

「私はもう少し本を読んでからにするわ」

ロビンはにこりと笑ってナミに応えた。

「おれも薬草を調合してからにする」
「そうなのか? しょうがねェな〜おれも手伝ってやるよ」
「ウソップ、ありがと」

チョッパーの言葉にウソップは胸を叩いて手伝いを申し出た。

「ロビンちゃん、弁当はキッチンに置いてあるから、お腹が空いたら食べてね」
「ありがとう、コックさん」
「おれ達のは?」
「あ? あるある。勝手に食え」

サンジのロビンに対する態度とウソップに対する態度はかなり差がある。

「それじゃあ私達四人で探検ね」
「久々に肩慣らしするかァ」

めずらしく起きていたゾロはニヤリと悪人面で笑った。

「ナミも行くのか〜めずらしいな」
「お宝があるかもしれないじゃない」
「あァ、なるほど」

即座に納得するとルフィは弁当などが入っているリュックを背負い直して、船から降りた。
島に足をつけた瞬間、ルフィはピタリと立ち止まった。

「?」
「どうした?」

次に降りてきたサンジが不思議そうな顔をしているルフィを覗き込む。

「ん〜? いや、よくわかんねェけど……んー?」
「なんだそりゃ」

ゾロは呆れたようにルフィを見る。

「調子悪いなら船で休んでる?」
「ううん! 大丈夫だ」

心配そうに尋ねるナミにルフィは笑いかける。

「じゃあ、行ってきまーす!」

船から見下ろす三人にルフィはブンブンと手を振った。

「気をつけてな〜」

三人も笑いながら手を振った。



***



しばらく森の中を歩くと見晴らしのよい切り立った崖に出た。

「大丈夫なのか?」

辺りを見渡しているルフィにサンジはコッソリと話し掛けた。

「ん? うん……なんか変な感じがするんだけど〜説明しづらい感覚だ」

ルフィは困り顔でサンジを見上げた。

「そうか。何かあったらすぐ言えよ?」
「うん! ありがと、サンジ。でも大丈夫だ。なんか慣れてきたからな」
「慣れる? お前の状態がイマイチわからん」

にしし、と笑ってルフィは再び辺りを見渡した。

「なんか、見たことない草ばっかりだよな〜」
「そうだな……ぶっ」
「あはは! 何やってんだサンジ!」

サンジが上を見るのと同時に頭上の木からタコが落ちてきた。

「なんで木からタコが落ちてくるんだ!」

サンジは自分の顔に張りついているタコを引き剥がす。

「何やってんだ、お前」
「木からタコ? ……変な島ね」

ゾロは鼻で笑い、ナミは辺りを見渡した。

「あはは」
「いつまでも笑ってんなよ……ほれ」
「わぷっ」

笑い続けるルフィの顔面にサンジはうごめくタコを張りつけた。

「はは、確かにおもしれェな」
「も〜ひでェな! ……あはは」

笑うサンジにつられルフィもタコを引き剥がしてから笑った。
笑い合う二人を少し離れた場所でナミとゾロは見ている。

「……なんか腹立つな」
「同感。ゾロ、邪魔してきなさいよ」
「お前が行けよ」
「イヤよ。ルフィに嫌われたくないもの」

ゾロは無言でナミを睨むがナミは少しも恐がらない。

そのとき、足元に大きな影が通りすぎた。
ゾロが素早く頭上を確かめると2メートルもあろうかという大鳥がルフィに狙いを定め、円を描くように飛んでいる。

「ルフィ! 危ない!」

ナミも大鳥の意図に気づき、叫んだが間に合わない。

「へ? うわっ!」
「ルフィ!!」

運悪く崖のそばにいたルフィは大鳥の勢いに足を踏み外す。
サンジが手を伸ばすが届かない。
ルフィの後を追い、サンジも崖から飛び降りる。

「ルフィ! サンジ君!」

大鳥はルフィの持っていたタコを掴むと空高く飛んで行ってしまった。
麦わら帽子がパサリと地面に落ちる。

「ゾロはストップ!」
「何でだ!?」

二人の後を追い、飛び降りようとするゾロをナミは麦わら帽子を拾い上げながら止めた。

「ルフィ達も心配だけど、あんな怪鳥がいるのよ? つまり、猛獣がこの島にいるかもしれないの。誰が私を守るのよ?」
「お前なァ……」
「ルフィはゴムだし、サンジ君も丈夫だし、心配無用よ! 合流する方法を考えましょ?」

ナミは麦わら帽子を被り、踵を返して歩き出す。

「はァ……そうだな」
「よく考えたら、あんたが一人で後を追う方が心配だわ」
「……何で?」

先行くナミの横に並び、ゾロは不機嫌そうに問い掛ける。

「迷子になるでしょ? 一生この島で迷い続けるのが簡単に想像できるわ」
「……」

無言のままゾロはおとなしくナミの横を歩いた。



***



「ウソップ〜これ混ぜててくれ〜島に薬草がないか見てくる」
「了解! 気をつけろよ」

すり鉢に入っている薬草をすり合わせながらウソップは片手をあげた。
少しすると古ぼけた本を片手にロビンが部屋に入ってきた。

「船医さんは?」
「島に薬草を取りに行ったぜ」
「あら、大変」

少しも大変そうな雰囲気ではないがロビンは困った顔をしていた。

「何が大変なんだ?」
「この島のことなんだけど。この本に書いてあったの」

ウソップはロビンに差し出された本を手に取りパラパラとめくる。

「ん〜どれどれ…って読めねェよ!」
「フフッ」

その本はウソップには読めない文字で書かれていた。

「で、結局何が書かれてるんだ?」

本をロビンに返し、ウソップは首をかしげた。

「この島は『聖なる島』と呼ばれていて二十年に一度しか海面に出て来ない島なの」
「は〜、なるほどなァ。だから地図に載ってないのか」

ポンっと手を叩き、ウソップは納得する。

「ん? 待てよ。じゃあ沈むのか? この島は沈むのか?」
「いいえ。あと一週間は沈まないわ」
「よ、よかった〜」

ウソップは安堵の息を吐いた。

「そして『聖なる島』って呼ばれているのは…」
「ウソップ〜!!」

バタンと扉を開ける音とチョッパーの半泣きの叫びが船内に響き渡った。

「ど、どうしたんだ?」
「あ〜ロビンもいる〜うあーびっくりしたよー! もう皆としゃべれないかと思ったよォ」
「どういう意味だ?」

わんわん泣きながらチョッパーはウソップに飛びついた。

「『聖なる島』とは『悪魔を寄せつけない島』。つまり、悪魔の実を食べた能力者を元の身体に戻すという意味があるの」
「ってことは島に入ると能力者は能力が使えなくなるってことか」

泣き止んだチョッパーから話を聞くと、島に足をつけた瞬間にチョッパーは悪魔の実を食べる前のトナカイ姿に戻ったのだ。
慌てふためいて船に戻るとすぐに元に戻れたらしい。

「ということはルフィは普通の人間に戻ってるってことか」
「だ、大丈夫かなァ? そういえば違和感があったみたいだ」

島に降りたルフィの様子をチョッパーは思い出した。しかし、チョッパーと違い明確な変化がなかったせいであまり気にしなかったのだろう。

「…何かハプニングが起きそうな気がするわね」
「あのメンバーでハプニングが起きない方が変だよなァ」

三人は沈黙し、無事四人が帰ってくることを願った。



***



「いてて……うお! 結構、高いトコから落ちたんだな」

サンジが上を見ると自分達がいた場所はかなり高い場所にある。
ナミやゾロの姿は見当たらない。
すでに自分達を探しに降りているのかもしれないとサンジは納得した。

「…おい、ルフィ? 大丈夫か?」

サンジがまっ逆さまに落ちた先はワカメのような草が生い茂っており、かすり傷はあるものの大ケガは免れた。

「……う〜、ビックリしたァ。大丈夫……っ!」

ゆっくりと立ち上がろうとしたルフィは顔をしかめ、再び座り込む。

「おい、どこか痛むのか?」
「足が……痛い…」
「足? 見せてみろ」

痛がる右足にそっと持ち上げる。どうやら挫いているようだ。

「うー」
「折れてはねェみたいだな。挫いてんだよ」
「……痛い」
「あ? ちょっと待て……なんで…お前、ゴム人間だろ?」

ルフィはきょとんとした後、驚き、自分の頬を思い切り引っ張った。

「いひゃい! ……う〜」
「伸びねェのか……どうなってるんだ?」
「なんか変なのはこの島に入ってからだ」

引っ張りすぎて赤くなった頬を擦りながらルフィは涙目でサンジを見上げた。

「つーことは、この島が原因か?」
「そうかも……ん、我慢すれば歩ける」
「はァ…悪化するぞ? ほら」

木に掴まって立ち上がったルフィの前にサンジは背を向けてしゃがみこんだ。

「へ?」
「おぶってやるよ」
「え? い、いいのか?」
「イヤなら言わねェよ」

そわそわとしながらルフィはサンジの背中にそっと乗った。
サンジは軽々と立ち上がる。

「あっ、帽子!」
「ナミさん辺りが拾ってくれてるだろ」
「それもそうか」
「そういや、リュックどっかいったみたいだな」
「あー! ホントだ!弁当……」

どうやら崖から落ちたときにどこかへ行ってしまったようだ。
しょんぼりとするルフィにサンジは笑う。

「船に帰ったら何か作ってやるよ」
「やった! じゃあ肉がいい!」
「あはは、仕方ねェな」

とたんに元気になったルフィにサンジはさらに笑った。
歩きだしたサンジにルフィは疑問をぶつける。

「サンジ、道わかってんのか?」
「いや、勘だ。ナミさん達もおれ達を探しているだろうから動かない方がいいかもしれねェんだけどな」
「ん〜おれの勘じゃ動いた方がいいと思うぞ? ここにいるよりいい気がする」

ルフィは足をバタバタさせた。

「おい、暴れんな。お前、勘がいいからなァ。移動して正解だな」
「えへへ、サンジの背中は落ち着くなァ」

ルフィにぎゅーっとしがみつかれサンジはニヤけてしまう。

「つーか、お前軽いな。あれだけ食ってんのに不思議な話だ」
「消化がいいんじゃねェか?」
「遊び回ってるもんな〜それに」

急に黙ったサンジにルフィは首をかしげる。

「それに?」
「夜の運動もしてるもんな」
「夜の? ……っ!! ………いっ」
「いてっ……おいおい、大丈夫か?」

サンジの発言を理解し、驚いたルフィは思わずサンジを突き飛ばしたのだ。
当然、ルフィは受け身も取れないまま地面に落ちた。
尻餅をついたまま、ルフィは赤い顔で固まっている。

「おーい、真っ赤だな。照れすぎだろ」
「なっ! さ、サンジはアホだ!」
「失礼な奴だな。事実を言っただけだろ?」

ニヤニヤしながらサンジは立てずにいるルフィの前にしゃがみこむ。

「じ、事実じゃない! おれの体重と……えと…その…え、エッチは関係ないもん」

顔をさらに赤くしてルフィはサンジを睨む。

「そうか〜? そんなのわからねェだろ」
「関係ない関係ない関係ない!」

ムキになって否定されるとからかいたくなるものでサンジはルフィをその場に押し倒した。

「うわっ! な、何すんだよ〜」
「関係あるかないか試そうかと思ってな」
「い、今したトコでわかるわけないだろ!いたた……」

挫いた足が痛んだらしくルフィは顔をしかめた。

「暴れるなよ。足、悪化するぞ?」
「じゃあ退いてくれ! 無関係だから!」

悪化すると言われ、身動きが取れないルフィは精一杯サンジを押し退けようとするがうまくいかない。

「根拠は? そう思う理由を教えてくれたら退いてもいいぜ?」
「ま……や、やっぱり言わない」

何か言い掛けて止められると気になる。
サンジはルフィの髪を優しく撫でた。

「へェ? じゃあ続きをしてもいいんだな」
「んっ……だ、ダメだ! ストップ!」

軽くキスをされルフィは慌てる。

「なら言ってみろよ」
「ま……」
「ま?」

ぎゅっと目を瞑り、ルフィは思い切って口を開いた。

「ま、ま、ま、毎日してるわけじゃ…ない……から…」

語尾は擦れるほど小さな声だった。
その理由にサンジも納得する。

「あ〜、なるほど。確かに毎日はしてないもんな」
「…………うん」

恥ずかしさの頂点にいるのかルフィは赤い顔のままサンジと目を合わさない。

「おれは毎日でもしたいんだけどな」
「う、ウソ?」

驚きの発言にルフィは恥ずかしいのも忘れてサンジを凝視する。
するとサンジはニッコリと笑った。

「若いから本当。でも邪魔者が大勢いてなかなかできねェんだよ」
「邪魔者?」

邪魔者が誰か本気でわかっていないルフィにサンジはため息を吐く。
自分とルフィが付き合っていてもルフィを諦める気など全くないクルー達の存在に何故本人は気づかないのだろう。

「はァ…そんなんだから不安になるんだよな」
「何がだよ〜」
「ん? 待てよ。よく考えりゃ今はチャンスなのかもな」

話について行けず不満そうなルフィを見てサンジはニヤリと笑った。
その顔を見てルフィは本能的に危険を察した。

「邪魔者もいないし、青空の下で愛し合うのもいいかもな」
「ヤダ! そ、外だぞ?」
「愛し合う二人に場所なんて関係ねェよ」
「っ……や……」

わき腹を撫でるサンジの手にルフィは声が出そうになるのを必死に堪える。

「こらー! こんな場所で何してんの!」

突然の声。
鞘に入ったままの刀がサンジの頭に激突する。
ルフィが声の方に目を向けるとナミがゾロの刀を鞘ごと盗み、サンジにぶつけたようだ。

「な、ナミ! ゾロ!」

痛がるサンジの下からルフィは這い出た。

「まったく、油断も隙もないとはこのことね…ルフィもほっとけばいいのに。はい、帽子」

サンジのたんこぶを優しく撫でるルフィにナミは呆れながら麦わら帽子を被せた。

「ありがとう、ナミ。でもよくここがわかったなァ」
「ギャーギャー騒いでたからな」

投げ飛ばされた刀を拾いながらゾロはサンジを睨んだ。

「あら? ルフィ、足が痛いの?」

腫れている足にいち早くナミが気づき、心配そうに声をかける。

「うん、なんかこの島だとおれ能力者じゃないみたいなんだ」
「あの崖から落ちて足を挫くだけだなんて強運だな」

ゾロは感心した。

「サンジ君はかすり傷だけみたいだし、ホント運がいいわね。とりあえず、船に戻りましょ」
「おぶってやろうか?」

ゾロがさりげなくルフィに問いかける。

「ん……ううん、サンジにおんぶしてもらうからいいや。ありがとな、ゾロ」
「……そうか」

断られたが可愛い笑顔を向けられると悪い気はしない。

「船までの近道も見つけてるからついて来て。特にゾロは私の近くにいなさいよ…あんたを探すのは面倒だから」
「……ハイハイ」

顔を引きつらせながらもゾロは怒りを押さえ込み素直に返事をした。

痛みから復活したサンジはルフィの頭を撫でる。

「なかなか可愛いこと言ってくれるじゃねェか」
「サンジにおんぶしてもらいたかったんだ」

照れ笑いをしながらルフィはサンジを見つめた。
我慢できずにサンジはルフィに口づけた。

「っ!」
「あ〜可愛い奴! ほら」
「サンジの行動はときどき、わけわかんねェ」

赤い顔でサンジの背におぶさる。

「おれは単純だ。わかりやすいと思うがな」
「そうかなァ」
「そうなんだよ」

歩きだしたサンジの背に密着して、ルフィはぼやく。

「さ、サンジ」
「ん? なんだ?」

先を行く二人をゆっくりと追いかけながらサンジはルフィの言葉に耳を傾ける。

「えと…おれは…サンジのこと大好きだからな」
「……嬉しいこと言ってくれるな。迷ったフリして食ってやろうかなァ」

ボソッと言った後半のセリフはルフィには聞こえていなかった。

「あの…その…えと…エッチしなくても大好きだからな?」
「おれはルフィが大好きだからお前といつでもどこでもエッチしたいの」
「そ、そうなのか…」

赤い顔を隠すようにルフィは肩口に顔を埋める。

「で、でも恥ずかしいんだぞ?」
「お前、慣れないよなァ。そこがまたいいんだけどな」
「……慣れるわけねェだろ」
「いてて…噛むなよ」

肩口に噛みつくルフィにサンジは苦笑する。

「は、恥ずかしいだけで別にイヤなわけじゃないからな……別に毎日したって……」
「……マジか?」

サンジの耳元で恥ずかしそうにルフィは呟いた。
突然のセリフにサンジは驚く。

「さっきだって……そ、そりゃ〜外は明るいし恥ずかしいからイヤだぞ……でもサンジがしたかったなら…別に」
「夢? これ、夢!?」
「えへへ、夢じゃないんだぞ?」

ルフィはサンジの頬っぺたにチュッと恥ずかしそうにキスをした。
サンジは本気で迷ったフリをしようかとしばらく悩んだ。



***



船に戻るとチョッパーがすぐにルフィの足を診察した。

「痛いな〜」
「しばらくは安静だな」
「船に戻ったら治るかと思ったけどケガは治らないんだなァ」

包帯を巻かれた足をじっと見ながらルフィはぼやいた。

「それだけですんでよかったと思えよな」
「それもそうか」

ウソップに呆れられ、ルフィは笑った。

「そういや、ナミ達が見当たらないけど?」

ウソップが辺りを見回すが料理を作るサンジと救急箱を片付けるチョッパーしか見当たらない。

「二十年も海底にあった島ならどこかにお宝が絶対ある! ってゾロとロビンを連れて出て行ったぞ」
「あはは、元気な奴らだ〜」
「うらやましいな〜おれもまだ探検したかった」
「後でおんぶして連れてってやるよ」

シュンとうなだれるルフィに調理を終えたサンジが笑いかける。

「ホントか? サンジ、大好き!」
「よしよし」

近くまで来たサンジにルフィは抱きつく。
そんなルフィの頭を撫でながらサンジはウソップを睨んだ。

「よーし! チョッパー! 薬の調合の途中だったなァ! さ、作ろう作ろう」
「お、おう。ルフィ、無理しちゃダメだぞ?」
「ありがとな、チョッパー」

チョッパーを掴み上げ、ウソップは急ぎ足で部屋から出て行った。

「どしたんだ〜ウソップの奴?」
「薬の調合がしたくてたまらなかったんじゃねェか?」
「変な奴〜」

サンジが追い出したとは露知らずルフィは首をかしげるだけだった。

「肉料理できたぞ。冷めないうちに食え」
「わーい!」

もぐもぐと美味しそうに食べるルフィ自身が美味しそうだなと思いながらサンジはルフィを見つめた。

「サンジは食わないのか?」
「……後で、な。それにうまそうに食ってる奴を見るのは料理人として幸せなんだよ。特にお前だとな」

サンジはルフィを見ながら幸せそうに笑った。
そんなサンジの笑顔に赤面しながらもルフィは恥ずかしさを隠すように食べ続ける。


このときのルフィは後で食べられるのが自分だとは全く気づいていなかった。





























*END*